第61話 8月14日(土)みんなで持ち寄ってジンギスカンだあ!⑧
さすがに全部持ってきてないから母さんと姉さん、それと美紀はもう1度うちの中に入って残った物や飲み物を持ってきてキャンプ用のテーブルの上や駐車場に直接置いた。これで全ての準備が整った事になる。
でも、母さんと姉さんは上原君がここにいる理由を知らない。だから僕が簡単に事情を説明したら母さんが満面の笑みで上原君に「わざわざありがとうざいます」と頭を下げていた。
僕は改めてチャッカマンで新聞紙に火をつけ、そのまま炭火に火が移ったところで団扇で扇いで炭火が真っ赤になる事を確認した後、炭を上から追加して網を乗せた。辺りに煙が上がりジンギスカンらしくなってきたし、クリス先輩や実姫先輩が歓声を上げた。
炭火が付いたから後は焼くだけだ。コンロの周りに玉ねぎなどを入れる籠を裏返してから毛布を折り畳んで敷いて即席の椅子を作って座った。他にもキャンプ用の折り畳み椅子を並べたから全員がコンロを囲むようにして座った。
僕と太一がトングを使って肉やウィンナー、カボチャなどを網の上に乗せて焼き始めたからいい匂いがしてきた。もう待ちきれないと言った感じで美紀が箸を伸ばしてウィンナーを取ろうとしたけど、実姫先輩が「いくら何でも生焼けだから早すぎますよ」と美紀を窘めた。
その後はどんどん肉やウィナー、野菜を焼いていったし、ある程度のところで網の半分に
僕が牡蠣を網に乗せた瞬間、歓声が上がったのは言うまでもない。
「・・・やっぱり牡蠣にはシンプルに
「未来さんもそう思いますか?わたくしも醤油ですよ」
「あたしも牡蠣は醤油だ」
「はあ?坪井美紀も篠原未来も藤本も何で殻付きの牡蠣に醤油なんか使うんだ?何もつけなくても牡蠣の汁は上手いんだぞ。百歩譲ってレモンだけど醤油なんて外道だあ」
「あー、その意見にみきも賛成ですよ」
「おー、チビもそう思うか?」
「あのー、お願いですからチビは勘弁してくださいよお」
「おお、そうかあ。じゃあ江田妹にしてやる」
「えー、勘弁してくださいよお」
「じゃあ、やっぱりチビにする」
「わかりましたよ。江田妹でいいです」
「おーし、江田妹、早速殻を剥け」
「あのー、いくら何でもまだ早いんじゃあないですかねえ」
「それもそうだな」
おーい、いつの間にか皆さん、手が止まって牡蠣ばかり見てますよー。そんなに牡蠣がいいんですかあ?
まあ、この時期に牡蠣は珍しいですからね。誰だって一番先に食べたいっていう気持ちが分からないでもないけどね。
「・・・ところで、そろそろ牡蠣が焼きあがったんじゃあないですか?」
「実姫先輩もそう思いますか?私もそろそろだと思いますよ」
「いい匂いがしてきたなあ。おい藤本!お前、牡蠣の殻を開けろ!」
「はあ?わたくしは先輩の下僕ではありませんから、これはお断りします。未来さん、あなたがやりなさい!これは先輩としての命令です」
「えー!勘弁してくださいよお。私だって困ります。美紀ちゃん、ここはお願いね」
「はあ?なんでみっきーがやらないんだあ?こえだあ!お前が先輩たちに代わってやれ!」
「えっ?先輩たちも酷すぎます!なんでみきがやるんですか?食べたい人が自分で殻を開ければ済む事ですよね」
「「「「うっ・・・ (・_・;) 」」」」
「そういう訳ですから、せんぱーい、お願いしますよー」
「はあ?こえださん、あなた、さっき食べたい人が自分でやればいいって言ったばかりでしょ?それを猛君にお願いするのは矛盾してると思いますよ」
「そうだそうだ!こればかりは藤本が正論だ」
「私もそう思うわ。こえだちゃんの我が儘よ」
「そうだそうだ、こえだのくせに生意気だあ!」
「だってー、みきは殻の開け方が分からないからせんぱいがやって下さいよお」
「「「「だーかーら、自分が食べたいなら自分でやれ!」」」」
「そういう先輩方もみきに言う前に自分でやったらどうなんですかあ?あー、もしかして自分で殻を開けた事がないから他人に押し付けてるんじゃあないですか?」
「「「「・・・・・ (・_・;) 」」」」
「ま、みきは自分で出来ないって正直に言いましたから悪くないですよねー。だからせんぱい、お願いしま・・・いーててて!ちょっとお姉ちゃん!火の前で人の耳を掴まないで頂戴!火傷したらどうするのよ!」
「はいはい、それは分かったから・・・美貴も美紀さんも未来ちゃんも実姫先輩も、揃いも揃って『みき』さんが四人とも出来ないとは情けないです。たしか阿笠先輩もミドルネームがMikiでしたよね。という事は『みき』さんが五人揃って他人に押し付けてるって事ですよね」
「「「「「すみません・・・」」」」」
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