人類強制化計画
無欲天性
第1話 始まりは突然に
この世界は非情だ。
東条蓮はそう思いながら今日も仕事の休憩時間にうどん屋に向かう。
12時から13時の間と決められた時間での休憩な為、今日もうどん屋は行列が出来ていた。
東条蓮(25歳)はしがないサラリーマンだ。
蓮は携帯をいじりながら並ぶと、前にはカップルがイチャイチャしながら会話をしていた。
女「ねー、今日健の家泊まっていい~?」
男「いいよ。今日も映画でも見るか?」
女「も~、そんなこといっていっつも気づいたら変なことするんだから~」
そんな些細なことから人は勝手に苦しみ、全てを投げ出して、くだらない言い訳を並べて一つの命を奪ってしまうのだ。
そうなってしまうのだから「欲望」というのは本当に罪深い。
自分はその気がなくても人は「欲望」には勝てない。
この世界には三大欲求というものがある。
「食欲」「睡眠欲」「性欲」の三つだ。
「食欲」と「睡眠欲」は体に影響を及ぼす可能性もあるから必要だろう。
「性欲」はどうだろうか。
別に「性欲」を満たさなくても体に悪影響を与えることもない。
性行為をしなくても妊娠も可能だから、少子化に悩む心配もない。
ましてやそれを満たすために犯罪や不倫が起きてしまう世界だ。
その事実に目を瞑り、この世界でその欲求を満たすやつは何万人、いや何億人いるのだろうか。
俺はそうはならない。いつかこの世界から「性欲」を無くしてやる。
そんな実現も出来ない夢ばかりを思っていた。
その日の20時、退勤して電車に乗る時に、あの出来事は起こった。
蓮は最近テレビゲームに夢中で、毎日家に帰るのが楽しみでなるべく急いで帰っていた。
電車に乗る時、前にいちゃついている大学生カップルがいたが、
その時はゲームのことで頭がいっぱいだった。
蓮達は電車に乗った。相変わらずイチャイチャしているカップルの会話がわずかに聞こえてきた。
男「ねえ、今日は泊まっていきなよ」
女「うん!泊まっていく!」
男「よーし、今日は寝かせないぞ~笑」
女「も~透ったら~、今日はちゃんとゴムつけてね」
男「え、もうゴムないよ」
女「えー、じゃあ今日は出来ないじゃん」
男「いいじゃん、いいじゃん。やろうよ」
女「出来ちゃったらどうするの?」
男「そん時はそん時っしょ!ねえ~しようよ~」
女「えー、もう仕方ないな~」
蓮は歯ぎしりをした。またこんな責任も取れないゴミ共がいずれ命を奪っていくのかと。そんなゴミ、早くこの電車に引かれて死ねばいいのにとまで思った。
その時蓮の頭の中で声が聞こえた。
― お前のその欲、叶えてやろうか? -
そう聞こえた瞬間、自分の体から何かが発しているのを感じた。
その発しているものを直接受けた大学生カップルの男が、
急に気が狂ったように暴れだした。彼女や周りの社会人らが驚きと共に彼を止めようとするが、男の暴れっぷりを誰も止めることが出来なかった。
次の駅に着いた途端、男はダッシュで反対側の車両に飛び込み、電車にはねられる。血しぶきと共に肉片がそこら中に飛び散った。
周りは悲鳴を上げる。
その時、蓮は驚きと同時に小さな笑みを浮かべていた。
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