第15話 互いの思い
「単刀直入に聞くね、リン。もしかして“転生者”じゃないの?」
「なっ!?」
リンは驚愕した。
(どうしてそんな言葉が……そんな単語が……)
「その反応を見る限り満更でも無いみたいね、でも一応聞いておこうかな、リン、あなたは転生者で間違いないかしら?」
ロドニは微笑みながら聞いてきた。だが、いつもと違った雰囲気を感じた。まるで胸の奥底に闇を何かを抱えているような、そんな感じがした。
それに、ロドニは明らかに確信をもって聞いている。恐らくイエス以外の選択肢はリンには無いだろう。だからここは素直に答えるしかない。
「……ああ」
顔を下に向けながら肯定した。
「やっぱりね、リンと関わってすぐ転生者じゃないかって思ってたし、これで予想が外れてたら精神的に終わってたところだよ。それと答えてくれてありがとう」
いつもと変わらないテンションを装いながら目の前で身をひるがえしながらこちらに近づき、腰を下ろしつつ微笑んで、上目遣いで覗き混んできた。
目が合うとリンは横に目を反らした。
「どうして、ロドニは転生者について知ってるんだよ、俺が見た書籍には、そんな文献無かったのに……」
「それは無いだろうね、例え「転生者だ」と言っても信じて貰えないし、言わない方が身の危険も少ないから基本的に伏せてるんじゃないかな? あくまで予測だけど」
「じゃあ、記録もないものを知ってるんだよ……」
ロドニはリンの疑問に対して一拍置いて言った。
「それはね、私も“転生者”だからだよ」
「……え?」
リンは絶句した。まさか自分の他に転生者がすぐ近くにいるとは思わなかった。
でも、自分の存在のことを考えたら居たって可笑しくはない。かといってそんな稀な確率を考慮できるわけもなかった。
「そんな驚くことでもないでしょ? 私は見た目は十歳の子供でも生前は高校生だったんだから、まあ、車の不慮の事故で死んじゃったんだけどね、その事を考えると今にも震えが止まらなくなるもの」
(俺とは全く違うな、こっちは不慮な事故とかで転生したわけじゃないし……んっ!? 待てよ? 不慮の事故? 高校生? 生前にそんなワードを聞いた気がするんだけど……ッ! まさか!?)
リンは仮説だが、もしそうだったらと考えてロドニの方に顔を向けた。
「あの、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「なに? 行きなり畏まって? 別に構わないけど」
了承を得ると、リンは息を吸って一拍開けてから聞いた。
「ロドニ、あなたの前世の名前は“木嶋 香苗”ではないでしょうか?」
「……え?」
ロドニは硬直した。そして予想外な出来事に戸惑い始めた。
「なんで……私の事が……わかったの?」
ロドニは声を震わせながら恐る恐るリンに聞いた。
「実は俺さ、香苗と同じクラス何だよ、それでさっきの話でまさかねって思って、一か八かで聞いてみたんだよ。本当に当たるとは思ってなかったんだけど」
リンは前世の知り合いだとわかると、少し落ち着きを取り戻して恥ずかしそうに頬を掻いていた。
「そうなんだ、全く知らない中年だったらどうしようって思ってたけど、私の選択は間違ってなかったんだ。それはそうと、お互い転生者で、生前の年まで同じとは思わなかったよ。“孝君”?」
リンはロドニの最後の言葉にピクッと反応した。だが、自分はクラスメイトだと明かしてる。バレても不思議ではなかったので、差ほど驚きはしなかった。
「バレちゃったか」
「うんわかるよ、クラスメイトのみんなの特徴くらいね」
「でも、よく俺だってわかったな」
「ずっと見てたもん、あの頃から」
「え? それって……」
そう言いかけたところでロドニの手がプルプルと震えてることに気づいた。
「私、転生者ってこと隠してたから気持ち変わっちゃったよね……あなたが想っていたのは転生後の私であって前世を持ってることを知らないときの私なんだから……でもこの先に進むために自分の秘密を隠すことはしたくなかったから。だから……」
彼女の目からは少しずつ光が失われて言った。
それを見たリンは意を決するような顔でロドニに語りかけた。
「いや、変わらないよ。最初は戸惑ったけど、今のロドニをみたら心配した自分がバカみたいになったよ。ロドニはさっきの俺みたいな不安をずっと抱えていたいたんだろ? 直ぐに言えなくてごめん。でも、俺はロドニが愛想が無くなるまでこれからも一緒にいたい。前世とか関係なく今の君に」
リンは自分の気持ちを嘘偽りなくロドニに伝えた。
すると、ロドニは両手で口元を隠し、目元には涙が溜まっていた。
「でも私、ずっと隠してた! 分かっていたのに、言えなかった! 怖かったんだよ! 言ったら警戒されてどっかに行っちゃうんじゃないかって、心の中で思って、言えなかった……だから私は覚悟を決めて、確認して、そして明かした……これで終わるなら私はこれからはなにも信じられなくなるかもしれない……そんなことをずっと思ってた……でもリンは私が転生者だと聞いても一緒にいたいって言ってくれた……だけど私はずっと自分を誤魔化してた! ついさっきだって断られることばかり考えてた……私は酷い人間だよ……そんな私でも一緒にいてくれる……?」
ロドニは初めて自分の気持ちを明かした。今まで心中で隠してた思いを。顔は涙と鼻水で酷いことになっていた。
そんなロドニをみて、リンは彼女のそばに寄って抱き寄せた。
「さっきも言ったろ? 俺は前世とか関係なく今のロドニと一緒にいたいんだよ。転生者とかなんとか関係はない、だから安心してくれ」
リンは微笑みながら言った。
ロドニはぎこちない笑顔を作り、一拍遅れて、
「……うん」
リンの言葉を受け取った。
「戻ろ? みんな待ってる」
「うん」
そして王宮の中に戻ろうとしたその時、
ピキピキっ!
目の前の空間にヒビが入った。
「な、何だ!?」
バリンッ!
そして砕け散った。中には槍を持った人らしき人物が出てきた。
『我ハ導キノ神ナリ、誤ッテ転生シタオマエヲ、排除シニキタ』
それを聞いて二人は絶句した。
(神様だと? てか今排除とか言ってなかったか? 逃げないと不味くね? これ?)
『死ヌガヨイ、人ノ子ヨ』
そう言ってリンに向かって一直線に槍を投げた。
(しまっ!? 気を取られ過ぎて反応に遅れた! 避けられない……)
そう思いながら死を覚悟した。
ザシュ!
(あれ? 死んでない?)
そんなことを思いながら前を見ると、前にロドニが立っていた。槍に貫かれた状態で。
衝撃な出来事に、リンの思考は停止した。
『ム? 誤ッタカ?』
「ロドニぃぃぃぃ!!」
ようやく頭が回りだして急いで駆け寄った。
「ごほっ、ごめん、リン……」
ロドニはからは大量の血が流れ、今にも死にそうになっていた。
「ばか野郎! 俺なんかを庇って……」
リンは目の前の光景に動揺した。
「私……リンに死んでほしくない……」
そういいながらゆっくり微笑んだ。
「お願いだ、逝かないでくれ、置いていかないでくれよ……」
リンは泣きじゃくりながら今にも死にそうなロドニの手を握りながら嗚咽混じりの声で言った。
「私はここまでみたい……短い人生だけど、ゴホッゴホッ、楽しかった……」
ロドニは完全に虚ろ状態になっていた。今生きてる方が不思議なくらいに。
「待ってて今治癒を……」
「そんな余裕は無いでしょ? 今は逃げて……」
「お前を置いていけるかよ!」
そんなやり取りをしていると、気がつけば導きの神がすぐそばまで来ていた。
『一ツ、提案ガアル。オマエノ命ヲ引キ換エにコイツハ助ケテヤル。選ベ』
「な、なぜそんなことを……」
リンは導きの神を睨みながら言った。
『ワタシノ目的ハ、オマエノ排除ノミ。ソレニコッチノホウガ確実ニ殺セル。サア、選ベ』
リンは迷うことなく。
「わかりました」
「リン!?」
導きの神はニヤニヤしながら槍を構えた。
『素直ナ者ハキライジャナイ』
「俺はお前が嫌いだ」
『死ネ』
リンは今度こそ終わりだと思った。
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