どんな御託を並べても

@This-is-Me

第1話 はじまり

私の一日は、オナニーから始まる。

自分のキモチがいい場所は、自分が一番よく知っている。

朝の祈りを捧げるかのように、体を弄び、声を圧し殺してイく。

すっきりした私は、手を洗い、朝食を作り、何食わぬ顔で家族を起こす。


優しい夫に、かわいい二人の子どもたち。

端から見れば、なに一つ不自由のない幸せな家庭。


それなのに私は、不倫をしている。


そんなつもりじゃなかった。

でも、気がついたら7年も経っている。

これを書いている今も、現在進行形で不倫中だ。


結婚して15年、不倫して7年。


罪悪感や背徳感なんてない。

だって、好きになっちゃったんだもの。


はじまりは、これまたありがちな

出会い系サイト。


はじめたきっかけは、セックスしたかったから。

私は、夫以外の男を知らなかった。


夫のセックスは単調で、早漏で、つまらなかった。

こっそり見ていたアダルト動画みたいなセックスがしてみたくて、出会い系に登録した。


下心しかない欲望丸出しのメールの嵐のなか、彼からのメールは

「する、しないじゃなくて、一度話をしませんか?」

だった。


今となると、あれは彼の常套手段だったのだろうけど、私は見事にひっかかった。


それから一週間後、初めて会った彼は、長身でスラリとしていて、柔らかな声や話し方に私は魅了された。


始めの出会いで、私はもう彼とセックスがしたくて仕方がなかった。

彼からのメールが待ち遠しく、せっせと妄想オナニーに励んだ。


でも。


ある日彼からメールが入り、わくわくしながら開くと、そこには地元に帰ることになったと書いてあった。


おわった。


そのまま会うことなく、彼は地元に帰り、私は何故か失恋したかのような気持ちになり、携帯を機種変した。


その後私は、他の男とセックスするという目標を見失い、元の普通の主婦として生活していた。


そんなある日、携帯が故障して修理できるまでの間、前の携帯を使うことになった。


そこには、彼とのメールのやりとりが残っていて、魔が差した、とはああいうことなんだろう、私は彼にメールをしていた。


返事がくるかどうかなんて期待していなかった。

いや、嘘だ。

期待しまくって、用もないのにメールの新着問い合わせをしまくった。


来ない返事に落胆しかけていたその時、メールがきた。


彼だった


偶然というか奇跡というか、彼はまた私の住む町に来ていた。


偶然携帯が壊れて、偶然メールしてみたら、偶然返事がきて、偶然近くにいた。


人生の分岐点なんて言葉があるけど、正に私にとってのその瞬間だった。


その夜、子供たちが寝静まったときに、私は彼を自宅に招き入れた。


夫は、単身赴任で不在。

彼もまた、単身赴任。


お互いの子どもの年齢も近い。


でも、だから何?


妻でもない、母でもない、まっさらな私になった。


私は、いわゆるW不倫というものを、子供たちが寝ている隣の部屋で始めてしまった。

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