Stand by you
@gurassimiri
第1話 レベル&べリアル
俺の存在は恥だ。
誰か俺をかき消してくれ。
今日もご主人は学校に行かないようなのだ。
日をまたいで顔も知らぬ誰かとゲームを興じている。
俺は主人に何をしてあげられる?俺はレベルに何をしたら、この負の環境から救い出すことが出来るのだ?
「ソウル」。
そう呼ばれている俺たちは主人となる人間の心のなかに住み着いている。
生まれるのも一緒。起きるのも寝るのも一緒。年をとり、老いて死ぬまで一緒の存在だ。
この国ではあまり布教されていないが、何処かの国では神様が人間を導くために魂に住まわせた天の使いとされるまで言われているらしい。主人がそういう本をあまり読まないので、詳しくはないが。
「なぁ、べリアル。」
久し振りにその名を呼ばれたので、つい驚いてしまった。
「こ、このモンスターは水属性に弱いらしいぞ。」
「いや、お前の名前の話だけどよ。」
意外も意外。
俺の名前……。
俺の名前は…………。
「無価値な者って意味らしいぜ。」
知ってるよ。ご主人が小さい頃にしたゲームで気に入ったモンスターの名前だ。
「ホント、そうだよな。他の奴等のソウルは算数の問題の答えを教えてくれるらしいぜ。」
ごめんな。本当はかっこよくて、強くて頼れるキャラクターだったよな。
だが、今の俺はどうだ。
レベルの気にさわるのを恐れて「学校に行け。」とか「そろそろ寝ろ。」とか伝えられずにいる。
苦しい。辛い。悔しい。
誰か俺を…………。
無言の間が続くかと思ったら、レベルは急に立ち上がり、カーテンを開けた。
「見ろよ!雪が降ってるぜ!」
12月の終わりだ。そりゃ雪も降るだろう。
「雪合戦でもするか?」
「何言ってんだよ、お前出来ないだろ。こっちにいないんだから。」
こっちって言い方が引っ掛かる。じゃあ俺の居場所はどこだ。
「どうりで寒いわけだ……。雪か、もう冬なんだな。」
外をしばらく確認していなかったから、気付かなかった。
そうか、もうあれから……。
主人が鼻水をすする。
しかし、止まらないので服の袖で拭う。
そして、涙が…………。
「レベル、何で泣いてるんだ?」
涙も袖で拭い、もう衣服はびしょ濡れだ。
「ティッシュで拭いた方がいいぞ。」
そういうと、主人は枕元にあるティッシュ箱から紙をとり、鼻をかんでそのままベッドに横たわる。
「ごめんよ……ごめんよぉ。」
「謝らなくていいぜ。側にいる。何があったってずっと一緒さ。」
俺はソウル。俺は魂の火。
どんだけ存在を否定されたってここにいる。温もりをやる。見守ってやる。
なぁ、そうだろレベル。お前は一人じゃないんだぜ。
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