吾輩はにゃんこである

お嬢

第1話 吾輩は拾われたのである。

 吾輩はにゃんこである。

 名前にゃまえはまだにゃい。

 どこで生まれたかというと正直わからにゃい。


 吾輩は生まれてすぐ母親からはにゃされた


「ママー、この猫だけ真っ黒!」

「まぁっ、黒猫ね!貸しなさい、お母さんが捨ててきます!」


 こんにゃ声がしたかと思うと、吾輩の首根っこが捕まれ、暖かにゃ母の腹元から1匹だけつまみ出され、硬い硬い箱のにゃかに閉じ込められた。

 吾輩は黒猫、というだけで身勝手な人間に捨てられてしまったのである。


 おんにゃの子にママ、と呼ばれたおんにゃは、吾輩の入れられた箱をもってどこかへ行く。

 後ろからは、ママやめて、猫ちゃん捨てないで!というおんにゃの子のにゃき叫ぶ声が聞こえるが、きっと彼女にできることはにゃにもにゃいのだろう。

 いたし方あるまい。

 

 まだ視界も確保できにゃいのに、こんな光も入らにゃい箱のにゃかに閉じ込められた吾輩にはどこへ連れていかれるのかとんと見当もつかにゃい。

 ただかにゃりの距離をおんにゃが移動したのは体感でわかった。

 

 吾輩の入れられた箱がどこか地面へと下ろされたようだ。


「ふぅ、ここまで捨てに来ればあの子も探せないでしょう。」


 一仕事を終えたかのように、おんにゃは一息つくとどこか遠くへ行ってしまったようだ。

 きっと家へ帰るのだろう。

 吾輩は住む場所も母もうしにゃってしまった。


 だが腹は減るのだ。

 吾輩は必死に声を荒げる。

 みぃー、みぃー!

 もしかしたら母が迎えに来てくれるかもしれにゃい。

 そんにゃ一心で吾輩は精一杯鳴にゃくのであった。


 どれくらい声を上げていたのだろう。

 吾輩にはわからにゃい。

 ただ、少し疲れてしまった。

 もう声も満足に出せにゃい。

 吾輩の声はみゃあみゃあと弱弱しくにゃってしまった。


 その時、一筋の光が吾輩の頭上から降り注いだ。

 一瞬の光のあと、吾輩の頭ににゃにかの影が落ちる。


「あたしに見つかったのが運の尽きね、憐れな憐れな仔猫ちゃん♡」


 そんにゃ、さっき吾輩を捨てたおんにゃとは別のおんにゃの声が聞こえたと思った瞬間、吾輩の意識は深い闇に沈んでいったのであった。


 吾輩の体はにゃにか柔らかなものに包まれている。

 体はぽかぽかと母の傍にいたときのように暖かい。


 にゃにか甘い匂いがする。

 吾輩の鼻がぴくぴくと動き、その匂いのもとを捉える。


「さぁ、た~んとお飲み。」


 吾輩は無我夢中でその匂いの元を吸った。

 吾輩の口に入ってくるそれは、心地よい甘さで吾輩の空腹感を満たした。

 ついつい吾輩の手が動いてしまう。

 本能にゃのだろう、まるで母の乳を押すようにゃ仕草で吾輩はもっともっとと催促する。


「思ったよりも元気ね、よかったわ。」


 腹が満ち足りた吾輩は眠くにゃってきた。

 そのおんにゃが、にゃにかぶつぶつととにゃえている声をBGMに吾輩は再び眠りの底へと落ちていった。

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