ある猫の話

真兎颯也

ある男子高校生の話

 廊下の窓から外を見れば、空は分厚い雲に覆われ、大粒の雨が降り注いでいる。

 季節は梅雨。ここしばらくはこんな天気の日が続いていた。

 こんな大雨の日は、いつも何かを忘れているような感覚になる。

 その何かは、とても大切なことだったような気がしているのだが……。


「……あ、傘忘れた」


 大抵、こんなしょうもないことばかりだ。

 今朝は雨が降っていなかったので、降らないと思って傘を持ってきていなかった。

 梅雨なんだから、高確率で降るだろ。

 我ながらアホだなー、なんて思いつつ、帰りは友人の傘に入れてもらおうと考える。

 アイツにバカ呼ばわりされそうだが、なんだかんだ言って傘に入れてくれるだろう。

 優しい幼馴染くんに傘に入れてもらえるよう頼むべく、俺は教室に戻った。

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