第2話

「え、ここって、なんで?」

僕は昨日までただの物入れだったはずの

押し入れの中が洞窟になっていることに

驚いていた…


ヒュォォオーー


洞窟の中を風が通る音がする。


ペタ ペタ ペタ


僕は一度引き返そうと思って後ろを向いたら

あったはずの扉が無くなっていたので

仕方がなく歩いてみた


「ここ、ほんとになんなんだろ…」


僕は少しニコニコしながら考えていた。

ここが怖いとかそんなことは思わなかった。

なぜならあの、嫌なところに居なくてもいいってこと。

正直、もういっそ、帰りたくない。

とまで思っていた。



そしてかなりの時間を歩いたと思う。


裸足で歩いていたからそこらじゅうぼこぼこの地面は痛い

足が限界に近ずいていた。


「っ…痛いな、何かないかな」


僕は周りを見渡してみたが

当たり前のように何も無い、ただ一本道が続いている。

やっと今頃になって少し怖くなってきた


「お母さん………」

僕は少し涙目になってまた少しずつ歩き始めていた


ペタ ペタ ペタ ペタ


洞窟の中は気温が低く水滴が落ちてくるほど。

次第に体は冷えだし体が小刻みに震えだした。


「寒い…寒いよ…」


僕はもう耐えきれなくなりその場に倒れ込んだ


「はぁ…はぁ…はぁ」


次第に視界がぼやけて来た、

そろそろやばい、と自覚した


(もう…僕ダメなのかな…)

そう思った瞬間


ドッ ドッ ドッ


何かが近ずいてくる足音が聞こえる

その足音は人のものではないとスグにわかった。

その足音はいおうな重さがあり

ビリビリと足音がするたび体に伝わる


「へへへ、いるじゃねぇか、いるじゃねぇか、いつもここにいんだよなぁ、死に際の人間前回は逃がしちまったからなぁ」

ジュルル


ものすごい低い声で話すそいつは

よだれを垂らしながらこっちにちかずいてくる


(なんだ…なんだよ)

僕は精一杯目を開いて見てみると

そこには身長はおよそ3メートル位あるであろう

牙が鋭く手には太い棍棒をもった大男がいた。


僕はそいつを昔見たことがあった。


あれは数年前僕が幼稚園生だった頃


ある日僕はお母さんと一緒に帰ってきて

お母さんがご飯を作りに台所に行き

僕は人形で遊んでいたんだ

そしたら、押し入れの隙間が少し開いており

その幅は丁度幼稚園生がピッタリ入れるぐらいの


そこに僕は入ったんだ。


そうだ、

「あの時も僕はここに来たことがあったんだ」

あの時はどうやって逃げれたのかは

覚えていない。


僕がそんなことを考えている間にも大男は近ずいてくる


ドッ ドッ


「一撃入れてグチャグチャにして食うか、」

「ひっ…」

大男はそう言って棍棒を振り上げる

ヒュォ


僕は恐怖と寒さで動けず、目をつぶった


(まだ死にたくない!だれか!)


僕がそう思い大男が棍棒を振り下ろした時だった


ガシュッ


「ぐぁぁあ…いてぇいてぇ、」

大男はうめきだす、ぼくはなにがなんだか分からず少しだけ目を開いた

するとぼやーと明るいものが見えた

僕は目を出来るだけ開いてよく見てみた


!?


「なに…」

僕の前にいたのは大男ではなく

松明を口に咥え、角が生えていて、鋭い牙を持った

「狼…?」


「誰が!狼だ!」

いきなりこっちを向き怒鳴ってきた

「うわっ…ていうか、狼が…喋った…」


「だから!狼じゃない!私の名はベイレフトウルフ高ランクの幻獣だ」


「え、その、ベイ…?ベーコンウルフ??」

よく聞こえなかったから僕がそういうと

「ベーコンじゃない!豚じゃないわ!ベイレフトウルフ!だ!」

また怒鳴られてしまった


「その、ベイレフトウルフ?ってなんで喋れるの?」

僕はそう尋ねるとベイレフトウルフは僕の方に来て松明を渡してきた


「話は後で、一旦このラーズゴブリンを倒してからだ」


突然のことで驚いており

そういえばすっかり大男ことラーズゴブリンの存在を忘れていた


「この、てめぇ、てめぇか!前もそいつを逃がしたのは!」


ラーズゴブリンは血相をかえ頭に血が登っている


よく見ると腕が片方しかない、もう片方は切断面から血がダラダラと出てきている


(多分あのベイレ…狼さんが掻っ切ったのかな?)

と思っていたら

ラーズゴブリンが動き出した


ラーズゴブリンはベイレフトウルフ目掛けて棍棒を振るう

スドォン


それを軽々と飛びかわすベイレフトウルフ

そのまま鋭い牙が伸びゴブリンの首元に噛みつき

勝負はついた


ズズゥゥウン


シュタ


倒せて満足したのかベイレフトウルフは尻尾を振りながら僕の方に近ずいてきた


「あの…ありがとう、ベイ…ベイレフトウルフさん」

「会うのは二度目だな涼」

ベイレフトウルフは僕の名前を呼び

これ出会うのが二回目だという

だけど僕はあったことも無いしましてや名前を言った記憶もなかった。


「????」

僕が不思議そうにしているとベイレフトウルフが振っていた尻尾がピタリと止まり尻尾がシュン

となった


「覚えていないのか、涼、あの数年前のことを、涼が初めてここに来たとき、俺はここで重度な傷を負いもうダメだと思っていたんだ、その時に涼が俺の前に現れて俺の頭をニコニコしながら撫でてくれたじゃないか、その後に何故か俺の体は回復した、」

ベイレフトウルフは僕が幼稚園生の時に

一度ここに来た時の話をした、

僕は少しのことしか覚えていなかったから

そんな事があったんだと思った。


「そうなんだ…僕そんなことしたんだ」

「そうだ、それでその後涼はどこかに歩いていったからゆっくり後ろから着いて行ったらこいつ、ラーズゴブリンがいて今回と同じようなぬ涼を襲おうとした、」


「その時、助けてくれたんだね?」

僕がそういうとベイレフトウルフはこくんと頷いた

「そして、その後涼の居たところを見るともう居なくなっていてそれから俺はずっとまた涼に会えるかと思いここで待っていたんだ、」


「そっか…ありがとう、」

僕はそう言ってベイレフトウルフの頭を撫でた


…!?


ベイレフトウルフは少し驚いた顔をして

また再び尻尾を振りだした


「あと、ひとつ言いたいことがあるんだ」

ベイレフトウルフはそう言って僕の方を見た


「なに…?」

「涼には恐らくあの時から思っていたんだが

回復スキルか、回復魔法を持っているんじゃないか?あの時、俺を治したのは間違いなくそれだと思う」


僕は突然のことで驚いた

だって僕に回復させたりしたりすることが出来る能力があると言われたから、そしてそう言えば昔から擦りむいたり血が出てきたりした時は治るのが早かった、


そしていきなりベイレフトウルフは自分の牙で前足ををかんだ


「!?いきなり何してるの!?」

僕が慌ててそういうとベイレフトウルフは前足を僕に向けた


「この傷を治してみてくれ、そしたら本当かどうかわかる」


「え、でも、やり方なんて」

僕がそういうとベイレフトウルフは

「あの時の涼は俺の傷の場所に手をかざしてた」


僕はそう言われたので、何となく手をベイレフトウルフの前足にかざした


シュウウウウ


体の中から何かが出ていっているような感覚が伝わり

ベイレフトウルフの前足をよく見ると完璧に完治していた


「ほんとうだ…」


「本当だったな」

ベイレフトウルフは尻尾をフリフリして僕に言った





こうして僕は回復スキルを手に入れた。

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