さあ、空の果てを見つけに行こう
1話 大原
「
悲しい色を浮かべた瞳でどこかをうつろげに見つめる彼女は、僕が仕える姫様だ。僕は、姫様が4歳のころからお仕えしている。
普通の生活からかけ離れたこの部屋で、姫様は必ず外の様子を僕に聞く。
監視用の窓しかないこの牢屋のような部屋の中で、僕に外の様子を問うことだけが、姫様が外の様子を知ることができる唯一の方法。監視用の窓も、部屋の内側からは何も見えないように術がかけられている。
外の様子を聞いたとき、いつもは表情のない姫様の瞳が、少し和らぐ。
この笑みを見ることができるのは、姫様に仕えている僕だけ。そう思うと、嬉しい気持ちになる。ちょっとした優越感なのだろう。
姫様の部屋は、普通の部屋よりかは豪華で、何の不自由のない部屋になっている。龍の国のある高級ホテルの一室をモデルにして作ったのだとか。
僕はいつものように外の話をする。
「今夜は祭りがございますので、屋台の準備で騒がしくなっております。今日は晴天で、民も喜んでおります。」
僕が姫様に必ず伝えるのは、天気。
姫様が外界とかかわっていられたのは3歳のころまでだ。
本人から天気を聞くことはないが、天気を教えてあげないとふてくされる。
それが、僕が仕える姫、
この世界で最も強い力を誇る龍の国のお姫様。
「大原、今晩、祭りの様子を伝えに来なさい。終わったら、早急に」
「はい。かしこまりました」
驚いた。
姫様が外の様子を問うのは、基本、1日1回。2回も聞いたのは、僕が記憶する限り今回が初めてだ。姫様の様子を窺えば、どこかを虚ろげに見つめていた。
その視線の先には、かすかな光を感じた。
それは、僕の幻覚だったのか、それとも本当に光が差し込んでいたのかはわからない。すごく美しくて、希望の光のようにも見える光だった。
仕事に戻るため、姫様に一礼し、王の間へと向かう。
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