殺人犯がいる客船で1人だけ部屋に戻った男の話

ユキノシタ

コウカイしてます。


僕は山田二郎。いつも汗水垂らして靴底を擦り減らしている、どこにでもいる普通のサラリーマンです。はい。



何故、僕がこんな客船に居るのかというと、取引先のお偉い様から着いてきてくれと頼まれたからです。はい。



それでこんなに大きくて立派な客船に、こんな場違いな僕が乗っているわけなんです。…はい。



それなのに、そのお偉い様が何者かに殺害されてしまいました。…あっ。何故、殺害だと分かったのかというと、他のお客様の中に頭のキレる方がいましてね。その方曰く、背中をナイフで刺されていたんだそうです。はい。



僕、怖くなって、あの場から逃げてきたんです。だって、あの中に殺人犯がいるんですよ? 怖いに決まっていますよね。はい。



……ですが、よく考えてみたら、僕、怪しくないですか? 被害者と知り合いで、あの場から逃げて、おまけにリーマンですよ。



怪しいですよね。……そうですよね。何だか、怖くなってきました。僕が犯人にされるんじゃないかって。



あぁ。ほんと、何であの場から逃げてきてしまったのでしょうか。僕は。あんな怪しすぎる行動、皆さん僕を犯人だと疑っているに違いありません。はい。



……それに、昨日の夜の記憶が一部抜けているんです。…はい。



そんなことが知られたら、余計に怪しまれて…




コンコン。

「山田さん、いらっしゃいますか? 内山田です。少し、お尋ねしたいことがあるんですが」




さっきの頭のキレる人がやって来てしまいました。きっと、僕は疑われて、犯人だという目で見られ、警察に捕まるんです。はい…。




ガチャ。

「…何で、しょうか」


「あ、良かった。山田さん、客船に乗っている方で被害者と知り合いの方をご存知ですか?」




僕は恐る恐る手を挙げました。


目の前の内山田さんは目を丸くしていたと思います。僕は怖くて彼の顔が見れませんでしたから。


でも、驚いたことに、内山田さんの笑い声が聞こえました。




「それは知っていますよ。それに、犯行時刻と予想される時間は一緒に飲んでいたじゃありませんか。貴方以外に被害者と知り合いの方はいましたか? …それと被害者の名前を教えてください。持ち物に、身分を明らかにするものがなかったんです」




僕は力が抜けてしまいました。内山田さんの笑顔につられ、僕も自然と頬が緩んでいました。










【続かないと思うので完結で出しました】

【自主企画の題名提供から拾ったのですが、終わってました、悲しいです】

【ちなみに、お偉い様の名前は内田です】

【間違えて一度下書きに戻してしまいました】

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殺人犯がいる客船で1人だけ部屋に戻った男の話 ユキノシタ @Tukina_Kagura

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