第21話

「ねえ、なつ……何か気にくわないことを言ったのなら謝るわ。だからもう、こんなことはやめて頂戴。あなただって、ここで誰かに見られたら、アウトなのよ?」


 頬が紅潮したまま上目遣いでそう言ってくるゆきは、女の子のわたしでさえも虜にするようなインパクトがあった。だけど、この柔らかさは手放したくない。


 手放したくないのに、ゆきが涙の潤む視線で訴えてくるから悩んでしまう。そのうち、ゆきのおっぱいを弄んでいた手が止まり、居場所を失った。


「うう、分かったよぅ、やめるよぅ。だからそんな顔しないでっ」


「ありがとう、なつ。あなたが良心のある人で助かったわ」


 わたしが手を退けると、涙目で上目遣いをしていたのが嘘みたいに、ゆきはすぐに普段の冷静な女の子に戻った。切り替えが早い。セクシー女優のようだ。


「じゃあ、あたしはそろそろ着替えるから」


「う、うん。邪魔しちゃってごめんね」


 わたしが飛びついた勢いで床に落ちた服を拾って、ゆきは着替え始める。おっぱいばかりに目が行ってしまいがちだったけど、全体的にスタイルが良かった。


 腰も脚も、お尻だってスリムで、なのに出るところは出ていて。今日のわたしはゆきに嫉妬ばかり向けている気がする。いや、これはむしろ羨望の眼差しだ。


「さて、着替えも終わったし、早く弐宮くんのところへ行きましょうか」


「うん、そうだねっ」


 部屋を出ようとしてゆきに背を向けると、何故だか形容しがたい悪寒が身体じゅうを駆け巡った。何が何だか分からなくてゆきのほうを見ると、彼女はすぐ後ろで臨戦態勢を取っていた。


「やっと、あたしに隙を見せたわね、なつ。さっきの仕返しよ!」


「ひゃう……っ! いきなりはずるいよぅ」


「あたしもいきなりやられたのだけれど……うん、なつのは目視通り控えめね」


 失礼な人だ。自虐するのはまだしも、他人から言われるとムカつく。

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