第27話

「ねえ、賢一。本当に付き合っていないの?」


「だからそうだって。どうしてお前は、頑なにオレと三沢が付き合っていることにしたいんだよ。確かにあのとき、三沢に言いくるめられたのは事実だ。でもオレは何回もお前に言おうとしたよ。でも逃げられたりして言う機会がなかったんだ」


 それは『ちょっとした雑談』というやつだろうか。なつの協力者として暗躍していたはずの賢一が、実は僕のなかの誤解を解くことのできる唯一の良心だったとは。


「賢一くんったら、せっかく雄二がわたしのことで、もやもやしているのを眺められるというのに、何回もネタバラシしようとするんだから冷や冷やしたよぅ」


「あのな、三沢。悪いけどオレは、仲間内で隠しごととかはあまりしたくないんだよ。それで昔ひどいことになったからな。できるだけ対等で居たいんだ」


「その割にはけっこう賢一くんも、わたしの計画にノリノリだったじゃん。指を舐められたときも満更じゃなさそうだったし。もしかして、流されやすい?」


 バツが悪そうに目線を落とす賢一。まるで正論をぶつけられたかのような振る舞いだ。だけど彼がいくらこちらに擦り寄ってきても、けっきょく僕を騙すための演技をしていたのだから、なつと同じである。


 ふたりとも、僕が覗いていたことを知っていたうえで、平然と口裏を合わせていたのだから、もはや対等でもなんでもない。騙す側と、騙される側。僕らの関係はあるいは、昨日のあのときで終わっていたのかもしれない。

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