2番目の僕は誰からも愛されない
ASANQ
だからあなたは木偶なんだ
第1話
それから僕たちはどこへ行くにも三人で、誰かひとり欠けても物足りないといった関係にまでなっていた――と僕は、あのときまでそう思っていた。
『賢一くん……んっ』
『三沢っ。オ、オレ……!』
――ふたりが空き教室でとんでもないことをしているのを見てしまうまでは。
『ちゅっ、ちゅぱっ、んっむ……』
なつは僕を背に、賢一とキスをしていた。抱き合いながら、いやらしい水音を立てて。僕に気付いていないふたりは、ふたりだけの時間を重ね続ける。
あれは間違いなく、キスだ。僕が図書委員の仕事で遅れている隙に、ふたりはそんなことをしていた。
『んふっ、あぁむ……じゅる、はむっ。ちゅ、はぁんん』
脳裏に浮かんできたのは、なつとの健全な思い出。それがこの数分のできごとで穢され、黒く塗りつぶされていく。どこか遠い所へ行ってしまったように、小さな面影は目の前から消えていく。残ったのは、ひたすらに黒い記憶だけ。
『ぷはっ……こんなに長くシたの初めてかも♪』
『オ、オレはこんなこと自体初めてだよ……まさか三沢にこんなことをしてもらうなんて』
お互いを貪り合うだけの長いキスを終えたふたりは、最後に軽く唇を触れ合わせて、抱き合った。どこまでも僕の存在を否定するかのような、残酷な温かさを主張して。
手に掛けたばかりのドアから手を離し、僕はひとり学校を出た。
ふたりにはメールで先に帰ったことを伝えた。もう僕たちは友だちなんかではない。そう考えて、僕はふたりからしばらく距離を置くことにしたのだけど――。
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