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「はい、将来パティシエになりたくて」

 パティシエ! 和菓子屋の一人娘がパティシエだと! 店先に立つ時の着物姿がよく似合っていたと言うのに!

「よくご両親許したね」

 きっと反対しただろうに。和菓子屋を継がないのならまだしも、洋菓子の道へ進むとは考えていなかったんじゃ?

「ふふ、頑張りましたから」

「凄いね」

「最初は凄く反対されましたけどね、店を継ぐものだと思っていたみたいですし」

 良く店も手伝っていたし、そりゃそう考えても仕方ないだろうよ。

「お店は継がないの?」

「継ぎますよ。もちろん。夢でしたから」

 桃子ちゃんはしっかりと目を見て言った。

「和菓子も昔から大好きなんです。作るのも食べるのも。でも、洋菓子も好きだから。それにきっと洋菓子を勉強していく上で、いままで経験した和菓子の技術とかも役に立つだろうし。和菓子の事を知っているからこそ、和と洋が合わさったお菓子が作れると思ったので」

 なるほど。確かに和と洋が合わさったお菓子は美味いものが多い。例えば生クリームの挟まったどら焼きとか、フルーツとクリームの大福とか、抹茶のケーキとか、あんこの挟まったパイとか。

「美味しいお菓子を作るのに、和も洋も関係ないから」

「そうだね、美味いもんは美味いもんね」

「はい。両親も分かってくれましたし、存分に勉強しようと思います」

「頑張って応援してるよ」

 それにめっちゃ和洋のお菓子好きだから、味見役でもいいし呼んでほしい。

「それと」

「ん?」

「・・・好きな先輩が、その学校へ通っているので」

 ひゅう~。いいじゃんいいじゃん!

「そっか、いろいろ頑張んないとね」

「はい」

 こくん、と頷いた桃子ちゃんは桃色の頬をぐっと色づけた。いいねぇ青春だねぇ。

「またお菓子食べさせてよ」

「期待はしないでくださいね」

 なんて、頑張る乙女のお菓子が美味しくない訳がないじゃないか。桃子ちゃんの作ったお菓子が店のショーケースに並ぶ日もそう遠くないのかもと思うと楽しみで仕方ないな。

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