第3話 

上半身を起こしたままの俺は子供の体を支えながらゆっくりと左足を引き抜いた。

よし、起きない。さて…もう一度辺りを見渡す。左手に押入れがある。音を立てないように押入れを開けるとブルー基調の一組の布団があった。

とりあえずその中から毛布を選ぶと半分仰向けになった子供にそっとかけてみた。

やはりかわいらしい顔をして寝息を立てている。

どうしていいか、何をすればよいかわからないが、まあ今出来ることの中では最優先ではないだろうか。

落ち着いたわけではないが、落ちついたふりをしてさらにもう一度あたりを見渡す。

壁が少し古臭い気がする。部屋のつくりも照明器具もだ。

ちょっと年季の入ったワンルームのアパートのようだ。もしこれが俺の住居なら、たぶん俺には家族はいない。単身赴任の可能性もあるがいずれにせよここには1人暮らしだろう。

ここにあるものといえば、先ほどの布団に簡単な調理器具と食器類、小さな冷蔵庫、コタツテーブルにテレビそして洋服ダンスだろうか?背の高さほどの木製の家具がある。ちらかってはいない。生活観も感じられない部屋だ。見覚えはあるような、ないような。ここが自分の家だと言われても違和感はない気がする。

さて、さて自分を特定できそうな物は?

タンスに近寄り引き出しを開けてみた。もちろん音を立てないようにゆっくりだ。

いくつめかの引き出しを開けるとゆうちょ銀行の通帳があった。名前は?山城ケイジだ!やはりここは俺の家のようだ。ついでに残高を確認してみると最終記帳が2018/2/24で300万円が引き出されている!「なんだこれ?」そういえば今日はいつなんだ?


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