二人の初詣_2020?

@nuneno

まえがき

 ずっと昔にオリジナルカレンダーの付録として書いた「初詣ート」を書き直したのが「二人の初詣」。その後も時折(、携帯端末の普及や進化などに連れ)マイナーチェンジしてきたような気もしますが今回改めて、二人の時間を遡って書いてみたくなりました。


以下にマイナーチェンジ作の一つ、A.D.2006年版を貼り付けちゃいます。オチ、結末を知りたくない方は読まない方がいいかもです(、一方で再度のご閲覧が難しい方など、よろしければ既存だけでも読んでってくださいませ)。


    二人の初詣_2006

一 彼女

 彼と付き合ってから二度目のお正月は田舎にいるお互いの家族との時間を大切することを優先し、東西に遠く離れたそれぞれの実家で過ごすことにした。それでも、新年の挨拶メールをしたら、やっぱり会いたくなったから、お互いの実家の中間に位置する、二人とも行ったことのない有名な神宮で初詣をすることにした。単純な理屈であるけれど、お互いが移動すれば、どちらか一方が往復する時間の半分の時間で初詣をして帰宅することができる。だから、朝一で出れば夕飯前に家へ帰れる計算。


 翌朝、家族には友達と初詣に行くと伝え、遅くとも夕飯には帰ると告げて出かけた。帰ってから、実はあの有名な神宮に初詣に行ってきたと家族のみんなを驚かす、サプライズ気分なのであって、決して彼と会うことを秘密にしているわけではない。少し手前の駅で彼と合流し、最寄り駅に着く。駅から神宮までお店がびっしり。麺類や揚げ物、甘味を食べ、お土産を買う。家に帰ってみんなが驚く顔が目に浮かぶ。やがて神宮の敷地内に入る。


 !。


 想像を遥かに越える長蛇の列。幾つかの角を曲がり、曲がる度に時計をみる。やがて、当初予定していた、駅に向かいたい時刻になる。いまさら、余裕をぶっこいて、のんびり昼食、デザートを楽しみ、にぎやかさにつられてお土産をあれこれ選んでいたことを思いだし、後悔と反省の渦にのまれる私。悩んだ末、今、彼と一緒で帰りは結構遅くなることを母に伝えるつもりで携帯電話を取り出した私に彼は次の角まで進んで神殿が未だずっと先だったらあきらめて帰ろうと提案してきた。家族を大事にする君は素敵だとおもうよ、という言葉を添えて。  


 角を曲がる。石段の上に神殿がみえる。みえるが、少なくともここからお賽銭を入れるには未だ、一時間はならび続ける必要がありそう。

彼と目が合う。私の腹は携帯電話を引っ込めたときに決まっている。黙って頷いた彼の動きを合図に二人で列を外れた。でも、彼は神殿をみつめたまま、私に語りかける。


「今年のお賽銭は五百円ずつな!。」

 彼が頭上に向けて何かを投げた。千円札で作られた折り紙の紙飛行機だった。さっきから何をごそごそしているかと思っていたら、、。飛行機は人波の上をゆっくり進み、神殿に吸いこまれていく。お祈りする彼につられて、慌てて私も手をあわせる。


二 彼

 思いっきり真上に飛ばした折り紙飛行機は十メートル以上の高さのところで小さく反転して神殿、お賽銭箱の方へ、そのベクトルを向けた。紙幣を半分に折って機体を丈夫にしてから作った飛行機の薄い平板翼の縦横比は横を大きくしてあるので折り紙飛行機は力いっぱいの鉛直の投げ上げに負けることなく、反転後、ゆっくり飛び始めた。


 進行方向と翼のなす角、迎え角が上向き五度程度になるように調整した。なぜなら、抑え角が大きいほど揚力は大きくなるが、あまり角度が大きいと翼の上を流れる風の乱れが激しくなるため、折り紙飛行機は失速してひっくり返ってしまうし、逆に迎え角が小さくなると揚力が不足し、すぐ降下してしまうからだ。ゆったりと落ち着いた飛行を遂行しているのは抑え角の調整がうまくいった成果だろう。


 機体の重心は揚力の作用点である空力中心よりやや前方に設定する。こうすれば、若干上向きな抑え角は否応なしに、空気抵抗を受け、自然とひっくり返ろうとする機体を抑えつけられる。重力の総和と仮定できる重心と揚力の総和と仮定できる空力中心を前後させることで進行方向に対して、お辞儀をする向きの回転力が働き、ひっくり返る方向の回転力に対抗する。さらに翼の後縁には少し上に折り曲げた昇降舵を作る。昇降舵といっても昇降しないで上がりっぱなしである。だから機首上げの回転力が生ずることになる。


 折り紙飛行機の前と後ろでひっくり返る方向の回転力、重心と空力中心ではお辞儀方向の回転力。また、抑え角で上向き、重心で下向き、空力中心で上向き、上がりっぱなしの昇降舵で下向きとこれら力の向きは交互に配置される。バランスが整えば千円札の折り紙飛行機は程よい抑え角を保ちながら滞空時間の長いビッグフライトを実現してくれるはずだ。お賽銭箱に到達する前ではあるが飛行機が無事飛び続けることを必死に願う。


 よく臆病風に吹かれる僕の性格は上がりっぱなしの昇降舵が受ける力と重力みたいに下向きだ。年末年始にそれぞれの家族を優先することも、こうして初詣をすることも彼女の発案である。ポジティブな彼女の姿勢はいつも僕を助けてくれる。でも、ときには僕が牽引役に回って、すこしでも彼女を楽にしてあげたい。ずっと、一緒にいたいから。千円札の折り紙飛行機は人波の上をゆっくり進み、神殿に吸いこまれていく。

                            (2006版おしまい)


 ラストは変えないつもりでおりますが、2020(以降かもなので?が付いてます)における彼女と彼のリテイクなので、気紛れに全然違うストーリィになるかもしれません。とりあえず、彼女の大学入試に向けての取り組みから書き始めます。受験校が変わってしまい、二人が出会わないなど全然、違うお話になる可能性も0%ではありません。

 そのような場合、元々は、この様な運命だった証としての役割をこの「まえがき」は担うことになるのでしょう。


 ついでに、この「まえがき」を書いている時点のリテイクポイントを幾つか、折角なので書き連ねてしまいます。

・前の部分から本編の描写を詳しくする。

・彼女が肚を決めるタイミングやグラデーションを再考しながら。

・空力とかに間違いや分かりにくい表現ありませんか。

・お金をちょっと大事にしていない感じあるかも。貨幣でも安全に投げれるよね!。

・大事な1000円札(初バイト代、幼少の想い出など)にしてしまうって、どう?。

・彼女パート拡張か、彼パート大幅変更の上、交互か。

などなど


ということで、受験勉強と格闘している彼女について(予定タイトル:彼女_01)、ただいま捏ねくり回し中。


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