一つの口と三つの耳

綾坂キョウ

星の囁き

さやさやと。

風が鳴るか、緑の子。

跳んで消ゆるは、二十日の鼠。

そも地上は騒がしく。

贋の光に満ちていることよ。



その横顔のなんたるか。

冷たさも顕に、皆を見下ろして。

銀のヴェールを被ったか。瞬きもせずに、そら、泪を溢すか……。



あまりにも、皆が煩いので。

赤子が泣くよ。今も何処かで、泣いているよ。

だが、ほら。やはり、あまりにも煩いから。皆が煩いから。

何処で泣いてるかも分かりゃしない。

ほら、まだまだ泣いてるよ。

ほら、何処かで泣いているよ。



風に囁く、緑の子。

お道化てみせた、二十日の鼠。

いつしか赤子は、笑っていたか。

冷たき横顔も、そら、そのように。

贋の光はがちゃがちゃと煩いが。

硝子玉の如く煩いが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る