おじさん

豊田とい

第1話:いい人 1節

「人って、あんなに変わるもんかね」

いきなりつぶやいて、俺はびっくりした

このおじさんは身内に最近不幸があって遺産でもめたらしい


とはいっても大した額ではない、らしい

でも、だからこそ(勝手な決めつけで悪いが)ハイエナのような

 親族に遺言すらも破られて物を取られている

訴え起こすような人じゃないし、そもそも少額だから泣き寝入りしているんだろう


このおじさんとはよく食事をする

ここのバイトはなかなか仲間と打ち解けられない人間、・・・まあ底辺の

 人間が集まっている職場だ

外国人もいるけどその人たちは、まあいい人だけどこんな底辺の

 たまり場から遠ざかっている

外から見たら単に外国人でたむろっていうように見えるんだろうな

うちの職場だけはたぶんそういうのとは違うわ


と、

「明日、何とか言うゲームの発売日なんだろ?休み交代してやろうか?」

多分黙って考えてたから気を使われたんだろう

「いや、いいですよそれくらい、子供じゃないんですから」


ほんとにいい人だ、そういえば今までたくさん気を使って貰っている気がする


「まだ(仕事)残ってるんだっけ?いいよ、俺が手伝ってやるよ」

「あの人実は奥さんが病気で今神経が立っているんだよ」

「送っていってあげるよ、バスは大変だろ、俺さ、今日は早く帰らなくていいんだ」


このおじさんがいなければバイトをやめていたかもしれない

都合のいい人扱いなんだろうなとも思うけど、人柄もあって結構このおじさんの

 仕事を手伝うこともある、一応自分の中では不公平にならないように

 頑張っているつもりだ

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