うろつき・中

中央劇場

マ「イーリちゃーん!」

イ「なんですか? マクロンさん」

マ「今日劇場で歌劇の新作やるみたいなんだけど

  一緒に行かない?」

イ「歌劇、ですか 見たことないですね

  行ってみたいです」

マ「ほんと? じゃあお昼ご飯食べたら行こうね」

イ「ケティさんは誘わないんですか?」

マ「ケティは歌劇あんまり好きじゃないらしくて

  色恋なんざ性欲の上っ面だってさ」

イ「あー、言ってそうですね」


イ「うわあ、人がいっぱいだ」

マ「この劇団、人気あるからねえ

  今日は天気もいいし、まさに演劇日和って感じだよ」

イ「都外にあった劇場は建物の中だったけど……

  野外にある劇場ってのも新鮮でいいですね」

マ「そういえば、他の国では屋内が主流なんだっけ

  ずっとここに通ってたから、こっちが普通だと思っちゃってた」

マ「と言うか、劇場には行ったことあるんだね

  てっきりずっと森の中にいたのかと思ってた」

イ「大きな集落の市街地なんかに取引に行くことがあって

  その時にちょっと覗いたくらいですけどね」

イ「長い時間入れたわけでもないし

  自由に使えるお金ももらえてなかったですし」

マ「ええ、おこづかいなかったの?……ってそっか

  自給自足の社会じゃお金使うことないもんね」

イ「そういうわけで、歌劇ってものには憧れてて

  やっと見に来れて嬉しいです!」

マ「うんうん、喜んでくれてこっちも嬉しいよ」

(音・ブザー)

マ「あ、始まるみたいだよ」

イ「わくわくわく」


(音・拍手)

マ「わー、凄い話だったね まさかあんな展開になるとは

  曲も俳優さんもかっこよかったし!」

マ「来てよかったよねー、イーリちゃ……」

イ「……」

マ「ちょ、大丈夫? イーリちゃん」

イ「……」

マ「ダメだ、あまりの感動に呼吸すら忘れて呆然としている!」

イ「……あ、ごめんなさい、ぼーっとしてました」

マ「だいじょぶだいじょぶ、私も初めて見に行った時はそうなったから」

イ「そうですね、うまく言葉にできないですけど

  すごかった、です」

イ「私、この日のこと、絶対忘れません!」

マ「うん また見に来ようね!」

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