敏く鈍く(仮)

よこもりこもり

第1話 名付ける

細くて、薄っぺらくて、抱き心地がいい身体だった。


触れる前は、全部がすらりと真っ直ぐに見えたのに、抱き締めたら曲線だらけなのが不思議だった。

手のひらにちょうどおさまる肩の厚さ。

指先でなぞる背中のくぼみ、いっそ壊したいほど頼り無げな腰。

左耳のすぐ近くで聞こえる声。

届いたのは、きっと心臓の近くだった。


不思議だから、もっと知りたい。

心地いいから、もっともっと触れたい。

身体の重みを、全部預けて欲しい。

そんな風に思ったのがあまりに久しぶりすぎて、もしかしたらこれが初めてなんじゃないかと思った。

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