一生読心!

@nokurakonnto116

第1話

 本当に唐突で申し訳ないが、僕、桐生寺 カイトの人生を振り返ろうと思う。

16年前、誕生。そこ始まった平凡な人生。

平凡な学校生活。平凡な趣味。平凡な家族。平凡な体重と身長。

ある理由で自分の事をごく普通のどこにでも居る高校生だなんて言えないが、それなりに普通の人生を送っていたはずである。

しかし、現在、そんな僕に明らかに平凡ではない出来事が起きていた。


「何度も言ってるだろ、私は君の良心の擬人化だ」

「ごめん、やっぱり分からないや」


それは、さかのぼる事5分前になる。

僕は、いつも通りダルそうに学校へと向かっていた。

この時、確か僕は

「あぁ、異世界転生とか出来ないかなぁ」

とか下らないことを考えながら、歩いていたはずである。

このあと、僕は、異世界転生どころではない奇妙な話に出くわすわけだが。


本当に唐突だった。 

僕と同じ体験をした100人中100人が唐突と言えるくらいには本当に唐突に、脈絡もなく、荒唐無稽に、彼女は現れたのだ。


「はぁ、なんか面白い事起きないかなぁ」

と、僕が呟き、瞬きをした時だった。


「やぁ、私の名前はユウ。君の良心の擬人化だ」

と、こちらに話しかけてくる謎の少女が突然現れたのだ。

「えっと……はぁ?」

と、僕がこんな酷い反応をしてしまったのには理由がある。

先程も述べたように、本当に唐突に彼女は現れた。

それに驚いてしまい、まともな反応が出来なかったと言うのが1つめの理由。

その少女が僕の良心の擬人化だとか意味の分からないことを言ってきたのに対して反応が出来なかったのが2つめ。

そして、最後の3つめは彼女の容姿にあった。


それは、今さっき2次元から出てきたと言われても信じてしまうほどの美少女だった。

可愛らしいカチューシャを着けた銀色の綺麗な髪。

カラーコンタクトでもつけなきゃ現実的に無理な赤色の瞳。

そして、現代日本では普通は普段着ではない和服を着ていた。

あまりにも美しいその美貌に見とれてしまったからと言うのが3つめの理由の全容だ。


「うん、君の心を見る限り、どうやら私はやっぱり美少女らしいね」

「え? 心を見る限り?」

「うん、私は君が見てる幻覚みたいなものだからね」

幻覚?

幻覚だと?

いったいどういう事だ?

もしかして、この目の前にいる美少女が僕が見てる幻覚だとでも言うのか?

おいおい、冗談じゃないぞ。

それじゃあ、僕の頭がおかしいみたいじゃないか。


「うん、まぁ君の頭は間違いなくおかしいね。普通はここまで鮮明に僕の事を作れないからね」

「作る?」

「あぁ、こっちの話。気にしないで」

て言うか、さっきから僕の心がナチュラルに読まれて無いか?

いったいなんなんだこれは?

もしかして……


「あぁ、ちなみに、君と違って私は読心能力者なんかじゃないぞ」

と、僕の心の中の思考を先回りして答える少女。


君と違って……だと?

もしかして、この子は僕の秘密を知っているのか?


「あぁ、勿論だ。私は君の妄想だと言ってるいるだろう。つまり、私は君と同一人物と言っても過言じゃないんだ。君の事なら何でも知ってるよ。例えば、君の人の心を読むことが出来る能力とかね」


そう、これが僕が普通の高校生と言えない理由。

読心能力である。

僕は触った人間の心を読むことが出来る。

僕は、生まれつきこの能力を持っており、その存在を世間に隠してきた。

何故なら、怖かったからだ。


どんな人間だって、自分の心の中を見られるのは嫌だし、怖いものである。

だから、僕にそんな能力があるなんて知ったら、誰も僕に近付いてすらくれないだろう。 

そう、簡単に言うとハブられたくなかったのだ。


「そして、そんな君にはもう一つ能力がある」


そう、僕には更にもう一つの能力がある。

それは、


「一生読心」 

それが僕のもう一つの力。   

僕が触れた人間と僕が『波長』のあう人間だった場合、僕は、その人の一生を見ることが出来る。

人の一生だ。

生まれてから死ぬまで。

それを現在、生きている人に触れると見ることが出来る。

それは、未来視と言っても良いのかもしれない。 


「そして、私が君の前に姿を現した理由は一つだ」

と切り出してくる少女。


「私は君の良心として君を止めにきた」

「止める?」

「おいおい、すっとぼけんなよ。私は知ってるんだよ。君がその能力をどう使っているかなんて」

「何だって?」


「さっきから、君の心の中を読んでたら、何だよ普通の高校生って、ふざけてんのか? 君は読心能力なんて無くても普通じゃないよ」

「おいおい、失礼な。僕は読心能力を持っているところ以外普通の高校生じゃないか」

すると、少女は笑みを浮かべながら言う。


「へぇ、積極的に人に触りに行って、一生読心を発動させようとしてるくせにか?」

「……それがどうしたんだ? 他人の一生を見るくらい良いだろう。別に」 

「見るだけならね。けど、君は違うな。君は見た他人の一生を積極的に変えにいってる。台無しな方向にね」

「……台無しとは限らないだろ」


「いいや、台無しだね。例えば、君の隣に住んでいる田仲さん。あの人も確か『波長』があう人間だったね。そして、君はその人の人生を台無しにした。具体的に言うと、一流会社に勤めるはずだった未来をホームレスとして一生を過ごす未来に変えた」

「おいおい、もしかして、君はホームレスが台無しだとか不幸だとか言うのかい? とんだ差別だな。僕の良心とは思えないよ」

「正体が出てきてるよ、カイト君。そして、君とホームレスが幸せか不幸かなんて議論をする気はない。とにかく、僕が言いたいのは一つだ」


「君を止めに来た。君の他人の人生を台無しにするという行動を止めさせたい」


「……ユウとか言ったっけ、君はいったい何者なんだい?」


「何度も言ってるだろ、私は君の良心の擬人化だ」


「ごめん、やっぱり分からないや」

そう、分からない。

何故、この娘は僕の事を邪魔するのだろう?

人生を変えられた人達は人生が変わったなんて分からないんだから、実際は誰も傷付いて無いじゃないか?


「良心である私が、君のその考え方を改めさせてあげるよ」

「出来るもんならやってみろよ」

これは、僕とその良心の戦いの物語。

他人の一生を覗いて、それを変えたい僕と、そんな行動をする僕を止めたい僕の良心の戦いの物語だ

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