恋愛下手は高嶺の花と

一条二豆

「救われたかった、君と僕」(前作)

 この、ある二人の学生を中心としたなんの救いようもない物語を始める前に、僕は、僕自身について語っておかなければならないように思う。


 中居向なかいむき伊吹いぶき。歳は一七。交友関係は浅く狭い。級友とは学校では普通に話をするが、別に遊びには誘われないという微妙な距離感を保っている。保っているというか、そうなっている。


 兄弟はおらず一人っ子。親は健在。それぞれ専業主婦と会社員をしている。家族間の仲は良好。今のところ、反抗期といった現象は見られていない。


 顔は平々凡々。成績はそれなりにいいが、国立大学を狙えるほどのものでは到底ない。彼女はいない。できたことがない。そもそも恋愛に興味がない。


 三次元に対しては。


 趣味、二次元。ラノベやアニメ、声優やコスプレ(僕自身はしないが)など、二次元に関するあらゆるジャンルを網羅していると言っても過言ではないほど、僕は二次元を愛している。


 よって、彼女はいないが嫁はいる。


 そんな、少し二次元オタクをこじらせた、どこにでもいる高校生であるのが、この僕というわけだ。


 そして、そんなどこにでもいる男子高校生と、とある女子高生が見舞われたあの半年間は、あまりなさそうで、けれど、どこにでもある、そんな物語だったのだ。 

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