第44話

 昔々、ある所に魔導を極めた小さな王国がありました。

 その国は魔導に関して高い技術を持っていましたが、とても封鎖的で秘匿されていたため、誰もその国の存在を知りません。

 しかし、封鎖的でありながらも今は失われた高水準の技術により、国は成り立っておりました。

 その国では、若くて魔力の高い王様が治めておりました。

 最初は平和だった国ですが、年月を重ねるごとに段々とそれは変わっていきます。


「私の魔力が少なくなっていく……」


 王様は、自分が年を取るごとに少なくなっていく魔力に戦慄を覚えます。

 王様にとって、魔力は絶対不変の物。少なくなるなど、もっての他だったのです。

 そして、自分こそが王に相応しい。自分が年を取って死ぬなど有り得ないと本気で思っていました。


「不老不死になる魔導具を開発しろ!」


 王様は、国中にそんなお触れを出しました。

 魔導具に関しても高い技術を持っていた国民達は、王様から提示された報酬につられ、こぞって開発に取り組みました。

 しかし……どんなに年月を掛けても不老不死の魔導具が開発される事はありませんでした。

 王様は、とても焦りました。かなりの高齢になり、自分の死期を悟ったからです。


「ワシが死ぬなどありえん! ワシは、この国の王じゃぞ!」


 王様はわめき散らしますが、誰も答えません。

 いよいよダメかと王様が諦めかけた時、一人の魔導士が訪れました。

 国外の者を寄せ付けない結界を張っていたので、その訪れた魔導士に驚いた王様でしたが、その者が発したセリフに心惹かれます。


「この宝珠をお使いください。これを核に埋め込めば、貴方様は永遠の命を得る事でしょう。ただし……」


 その核は高い魔力を持つ人間であること。

 本来ならば躊躇う条件ですが、王様にとっては些細な事でした。


「お父様? 何か御用ですか?」


 王様は、早速自分の娘を呼び出しました。

 年を取ってから出来た娘で、まだ十歳にも満たない少女ですが魔力はかつての王様の全盛期にも匹敵する魔力です。


「いや……! やめて、お父様! いや、いやぁ!」


 泣き叫ぶ娘に王様は無理矢理、宝珠をその体に埋め込みます。


「あ……あああああああああ!」


 宝珠を埋め込まれると、少女は悶え苦しみます。

 そして――悲劇は起こりました。

 宝珠は怪しく輝きだすと、国中の魔力と生命力を奪いだしました。

 突然の事に国民達は為す術もなく全滅。

 勿論、それは王様とて例外ではありませんでした。


「馬鹿な……こんな筈は……」


 魔力と生命力を奪われ、薄れゆく意識の中、王様は歯ぎしりをします。


 ワシは……死なん! どのような姿になっても生き延びる! ワシは魔導帝! 世界最強の魔術師ソーサラーなんだぞ!

 

 その強い想いが叶い、王様はついに永遠の命を手に入れました。

 娘や国民を犠牲にして。

 

 ――アンデッドは、強い恨みや無念が元に発生する。

 王様の理不尽な行いにより命を奪われた国民達は、その無念さからアンデッドとなり今も王都内を彷徨っています。

 そして、結界により外から誰も訪れない死者の国は……すすり泣く少女の声をメロディに、今もどこかに存在しています。

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