第18話
「ふぁ、っあ……、あっ、んぅ!?」
イリスは俺の身体から放出された光のオーラに触れると、艶めかしい声を漏らす。
(ウォーミングアップよ! ぶちかましなさい、タイヨウ!)
俺は剣を水平に薙いだ。直後、刀身から周囲の地面をごっそり薙ぎ払うような光の斬撃が放出されて、周囲の
「…………」
数瞬、広場はしんと静まりかえった。
(タイヨウ、イリスに上空の
と、ルゥは俺に指示を出した。
「イリス、大丈夫か? イリス?」
俺は今日一番に冷静な声色で、イリスに声をかける。
「ふぁ、あっ、っ……」
イリスは俺の頭上で滞空したまま、キュウッと身体を丸めていた。俺の位置からだとスカートの中が覗けているが、隠す余裕もなさそうである。しかし――、
「イリス!」
「ふぁ、ふぁあい!」
俺が力強く名を呼ぶと、イリスはとろけきった声で返事をした。
「詳しく説明している時間はない。上空のみんなと一緒に、地上の
「れ、れき、っ、ます! って、ふぇえ!? は、速い!?」
イリスはろれつの回らない声でこくこくと頷くと、急上昇して上空へと戻りだした。どうやら俺の魅了スキルでだいぶ能力の出力が向上しているらしい。思った以上の速さで飛んでしまったのか、かなり驚いている。すると――、
「タイヨウさん、何事でひっ、っぁ……!?」
アナスタシアの方から俺のところへ来てくれた。半径十メートルの絶対魅了オーラ圏内に入った途端に、嬌声を漏らす。
(全力でアナスタシアを魅了しなさい)
ちょうどルゥの指示も下った。
「アナスタシア、
俺はそう言うや否や、一瞬で距離を埋めてアナスタシアを抱きかかえる。今の俺はルゥがリミッターを外したことで、魅了の力が強まっている。そんな状態の俺と肌を重ね合わせたら、いったいどうなるのか?
「あっ、はあっ、あっ、はっ、あ、っくっ~~!」
アナスタシアはゾクッゾクッゾクッと瞬く間に全身を震えさせ、白い頬をカアアアッと真っ赤に染めた。
「た、たい、よう、ひゃ!? たい、よう、ひゃ!」
何事かと問いかけようとしているが、完全にろれつが回っていない。
「たっ、よう、ひっ! ん、め、らめっ、い、いひっ、ひなり、らにを?」
これまでに魅了が発動したときの比じゃないくらいにメロメロになっている。
「あっ、あっ、おっ……、あっ、おっ……んはぁ」
アナスタシアは恍惚の表情で、だらしなく口を開いていた。
(最後にもう一押し、魅了して。
どうやら後は最後の仕上げを残すだけらしい。
「っ、めっ……、よっ、んぁ。めっ、らめ、な……の。こんっ、な、とこ……で……」
アナスタシアは俺の胸元をギュウッと掴む。まだ理性は残っているのか、周囲の目を気にして気恥ずかしさを感じているようだ。でも……。
「駄目だ。今、ここじゃないと駄目なんだ。君をパワーアップさせるから」
俺は
その上、思考回路もこれまでないほどに冷えきっているせいか、感情の働きがかなり鈍くなっている。だからか、俺は言われるまま、アナスタシアを魅了し続けていた。
そして、
アナスタシアをお姫様抱っこしたまま
「ひうっ、こ、れが、うわっさ、の……」「と、とのっ、がら、ひぁ、あっ……」「くっ、うっ、こん、なっ、とこっ、ろ、らのに……」
俺が
(はい、じゃあイリスのことも魅了ね。口説き落とすように、肌を重ね合わせて!)
やっぱりか。しかも、注文が多い。
「あ、あのっ! やさ、優しく、して、くださっ……!」
イリスは薄々と何をされるのか理解しているのか、オーラの影響で半ば魅了されかかった状態で顔を赤くし、俺の傍に立ち尽くしていた。
「ああ、大丈夫だ。優しくするから」
俺はイリスを怖がらせないよう、無垢な少女を騙す糞野郎の常套文句を口にした。そして、そのまま右往左往していたイリスの身体を抱き寄せる。
「ふぁ、あっ、はぁ、んっ、んあっ、んっ、くっ、はっ、んぅ……」
イリスは必死に声を抑えようとし、しかし、それでも声を漏らし、そのまま俺の胸元へと顔を埋めてしまう。だが、かと思えば、自分から俺の顔を見上げきた。
俺は至近距離からしっかりと、イリスの瞳を覗き込む。
「んはあああっ……」
ビクッビクッビクッとイリスの身体が震える。今まで我慢していた分、限界を超えて一気に声が漏れ出たという感じだ。慌てて口許を抑え、恥ずかしそうに再び俺の胸元に顔を埋めてしまう。
「んっ、んっ、ふーーっ、はーーっ」
イリスは俺の背中に手を回し、ぎゅうっと力強く抱きしめながら、必死に呼吸を整えようとしている。一方、俺のオーラを受け止めて魅了された子達は身体に俺の愛の力が馴染んできたのか、少しずつ余裕が生まれている。
「す、すご、い……!」「やっっぱり、殿方ってすごい!」「イリス総副団長、か、可愛い!」「いいなあ……」「ねえ、私も見たい! 壁役、早く交代してよ!」
陣形の外では今もなお大量の
「は、破廉恥だわ! イリスが、イリスが……!!」
アナスタシアも回復してふらりと立ち上がろうとしていたが、俺の腕の中で直に俺の愛を注ぎ込まれるイリスを目の当たりにして顔を真っ赤にしている。
(はい! もういいわよ。それだけ
俺はルゥの指示に従って。イリスの身体をそっと解放してやった。
「んっ、んん……!」
イリスはギュッと目を瞑り、そのまま地面に座り込んでしまう。
「なあ、アナスタシア、イリス。二人ともこれまでにないくらいに体内で
と、俺は身体が疼いている二人に注文する。
「くっ……、わ、わかったわ! ヘカトンケイル!」
アナスタシアは何か物言いたそうな顔をしていたが、そんな暇はないと考えたのか、すぐに行動に移した。そして、段魔の剛剣ヘカトンケイルの能力を発動させる。直後、アナスタシアの頭上に四十にも及ぶ大剣が出現し、上空にめがけて射出された。
「イ、イリオス、みんなを守って!」
イリスはまだ立ち上がることはできないのか、ぺたりと地面に座ったままだが、なんとか盾を掲げる。そして、難攻不落の天盾イリオスの能力を発動させた。すると、密集陣形を覆うように光の壁が展開されていく。
(ヘカトンケイルとイリオスの本来能力はこんなもんじゃない。二人とも高く見積もっても本来の性能の二割ってところね。ま、でも上出来よ)
ルゥはふふっと上機嫌に笑った。
(で、この後はどうするんだ?)
俺はすっかり乗り気なルゥに、微苦笑して尋ねる。
(守りは万全に固めた。今度はこちらから攻める番よ。神位の
ルゥは自信満々に語ると、俺に最終確認をする。
(当たり前だ、俺達でみんなの度肝を抜いてやろう!)
(よろしい。では、
(それって……)
昨日の訓練の時に、イリスとアナスタシアが教えてくれた天位以上の
(そうよ、天位以上の
(ああ!)
俺は力強く頷くと――、
「アナスタシア、イリス! 他のみんなも、これから俺の
「……何を、するつもりなの?」
と、アナスタシアは視線を俺に向けて尋ねる。
「天啓の
「エウァンっ……、時間を稼ぎます! 皆、死力を尽くしなさい!」
アナスタシアはそれ以上は何も言わず、
(タイヨウ、今なら頭の中に自然とフレーズが思い浮かぶでしょう!? 口にして!)
(ああ!)
と、俺は応じると――、
「開け、
気がつけば、口を動かしていた。
「時は来た!」
ルゥが言う通り、フレーズが頭の中で勝手に浮かんでくる。
「愛の縁に従い、その神話を示せ!」
と、俺がフレーズを詠唱している最中――、
「これは……、本当に天啓の
「すごい、私達がいくら修練しても身につけられなかったのに……」
アナスタシアとイリスは強く目を見開いていた。
「さすれば捧げん、永久の愛を」
俺は構わず詠唱を続ける。
「いざ、煌めけ、
俺がそこまで言うと、ルゥの刀身はこれまで以上に強い光を発した。俺の身体から溢れる愛の力のオーラも膨れ上がると、既に愛の力が身体に馴染み始めていたアナスタシア達の身体にも変化が起きる。またしても強い疼きが押し寄せてきたのか――、
「ま、またっ、なのぉ!?」「んっ、ん、はあっん!」
アナスタシアやイリス達は嬌声を漏らした。一方、俺は剣を空高くに掲げ、
「裁光の神剣ケラウノス!」
刹那。ケラウノスがおびただしい光の柱を打ち上げ、周囲を真っ白に染め上げた。
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