第3章-5 たのしいたのしい鉱夫体験
「鉱山での仕事は2つだ。掘る、運ぶ。あと、上で時々製錬をする」
俺は今、ジガンとともに鉱山に潜り、仕事を教えてもらっている。
麻で作った、急ごしらえのマスクをつけていても喉が痛い。ジガンは何もつけていない。
坑道は1本道でなくクモの巣のように張り巡らされている。もちろん地図などない。
今、掘り進めているという坑道の奥までやってきた。20分くらい歩いたかな。
坑道は全体的に広く、横5~10mくらいの広さがある。
つるはしや、鉱石の入った麻の袋が転がっている。
「ちょっと掘ってみても大丈夫?」
「あぁ」
鉱山でつるはしを振るうなんて日本では経験できない。正直掘って見たくてウズウズしてた。
掘りかけっぽいところに狙いを定める。まずは肉体強化をかけずに一発。
ガッッ!! カランッ
ちゃんと握ってたのに弾かれて落としてしまった。手がじんじんする。
本気で叩いたのに2cmも削れなかった。鉱山ってこういうものなのか。
次は肉体強化を使ってみる。
ガゴッッ!!
今度は弾かれなかった。それでも削れたのはせいぜい5cmくらい。
いくら異世界人は日本人より筋肉質とは言え、これはきついだろう。
よく見ると、つるはしはボロボロで道具の劣悪さも、仕事をきつくしているかもしれない。
鉱石入りの麻袋、重すぎて持てなかった。腰にも力を入れていたのに少しも持ち上がらない。
サイズは一抱えくらいなのに、重さは50kgはある。引きずるのがやっとだ。
こういう時は肉体強化。四股を踏むような格好で少しだけ運べた。
「これってどうやって運んでるの」
「普通に持ってだ」
ジガンは片手でもって見せた。この人と喧嘩したら引きちぎられそう。
「重かったけど、皆そうやって運べるの」
「何人かで持ったり、引きずったりしながらだな」
これをもって入口まで、考えるだけで腰が痛くなる。今までに改善しようと考えたことはないのだろうか。
朝飯と同じ、重い昼ご飯にげんなりする。
「どんな感じだった」
「ほとんど読み終わったにゃ。でも労働者の人数とか責任者の数が書類とあわないにゃ」
そのへんは昨日の会話でなんとなくわかってた。
「じゃあ実態を調べといて。あー人数だけいいや。書類と違うところはあとで問い詰めよう」
ナルの返事を聞いて姉に発言を促す。
「環境は他の鉱山と変わりありませんね。食事は1日2回、朝夕。日の出から日の入りまで働き、日の入り後は敷地内で自由に過ごすようです」
ご飯はは内容だけじゃなく回数も少ないな。
日の出から日の入りって12時間くらいじゃないか。季節によっても変わるし、曖昧な労働時間だな。でも逆に言えば、半日は休みなのか。
「部屋とかどうだった」
「大部屋で雑魚寝と聞きました」
200人が雑魚寝ってひどい環境だな。
「その大部屋っていくつあるの」
「1つです」
男女の区別もないのか。ひどいな。
初めに取り掛かることはここか。
「あとでその部屋に案内してよ」
仕事の話はこれで終わり。
ちなみに護衛は昼飯に顔を出さなかった。朝に娼館に行く、とすごいウキウキ顔で出て行ってから見かけない。
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