第1章-2 おっさんによる拉致宣言
豪華な天井だ。
目を覚ますと、大きなベッドに寝かされていた。
ベッドにはレースの天蓋がかけられ、ベッドの外の様子は影でしか捉えられない。
人が2人動いているのが分かる。
そっとレースの隙間から顔を出すと、外の1人と目があった。女の子だ。7、8歳くらい?
体型からそう判断した。アジア顔だが日本人じゃないかもしれない。
身長は120~130cmくらいだろうか。髪は少し茶の混じった色でポニーテールになっている。
じっと観察をしてた、ら、会釈をしてきたので会釈で返す。
可愛い子だが、服が質素というかツギハギが多く貧乏感がある。
その女の子はもうひとりの人に何か話すと、もうひとりが部屋から出ていった。多分こっちも女の子。
目があったほうが近づいてくる。
「お目覚めですね。ご加減はいかがですか。」
少し屈みながら、こっちの目をじっと目見て聞いてくる。
幼くとも整った顔立ちに少し、ほんの少しだけドキッとしたが、なんとか「問題はないかな?」と疑問形になりつつ答えれた。
「服は、その服は正装でしょうか。」
今着ている服は高校の制服だ。正装といえば正装か?
「制服だし正装かな?」微妙な線ではあると思うけど。
女の子は「そうですか」と呟き、「ではこちらへ」と外に誘導する。
着いた先は学校の校長室のような作りで、明らかに偉いだろうおっさんが一人と、秘書っぽい女性が一人いた。
おっさんと女性は大きな机の後ろに居て、おっさんはゴージャスな椅子に座り、女性は隣に立って書類っぽいのを見ている。
おっさんは大袈裟なまでに、豪華な服を着込んでいる。50歳くらいか。
女性はとてもスタイルが良い。身長は170cmくらいありそうだ。髪を後ろで束ね、キリっとしていてかっこいい。
「どうぞ」と促されたので椅子に座る。
大学受験の面接練習が役に立つ。
「こんにちは、私はメイド長のジェーンです。こちらはノルマンディ家当主のノルマンディ-グラフル様です。」
女性、メイド長はキリっとした厳しそうな見た目に反して、優しい口調で話しかけてきた。
「自分は材木ユウといいます。」
聞きたいことが沢山あるし、十分に混乱してる割には、ちゃんと答えれたと思う。寝起きで頭が回ってないのも助けてくれたかもしれない。
「君は冷静だね」
おっさん、なんたら当主が口を開く。渋くいい声だ。
寝起きで頭が回ってないからですかねぇと、ついさっき思ったことを答えた。
「ところでここはどこですかね」
「メゾン王国のノルマンディ領。その領主グラフル様のの館です。」
メゾン王国ってそんな国あったっけ。いやまず俺外国に送られたのか。拉致か。マジか。
スーッと頭から血が降りていくのがわかる。同時に足や背中に、変な汗が滲みでる。
外国ってやばくね。メゾン王国って何。未だに王国なんてあったか。あれか、国連みたいのに認められてないやつか。聞いたこともない国に拉致されるって、もう足掻きようがなくね。やばいやばいやばいやばい。
「ユウ様、これを」
女の子がグラスに水を入れて渡してくれた。
水は冷たく頭もゆっくり冷えてゆくのがわかる。
ゆっくり深呼吸をして浅くなっていた呼吸を戻す。
女の子に「ありがとう」と言い、グラスを返して、次に何を質問すべきか考える。
「えーと自分は何故ここにいるんですかね?」
暗に拉致の目的を聞いている。
人質にしてもせいぜい両親くらいしか操れないし、身代金が沢山出せるほど裕福でもない。
「君は召喚されたのだよ。」
うわぁぁ。宗教系かぁ。拉致のとこ召喚とか仰おっしゃっていらっしゃる。
「ここは地球ではない。別の世界もしくは別の惑星だ。」
これまたスケールのでかい宗教だなぁ。
「別の世界だの惑星だのという概念は君たち地球人がもたらしたものだ。」
じゃあ、あなたは宇宙人ですか。
電波か。電波は美少女だから許されているのであって、おっさん電波とか誰も得しないんだぞ。
「かなりの昔から2ヶ月に数人、そちらからこちらの世界に、人間が飛ばされている。原因は不明。君たちを地球に返す術すべは今の所ない。今は300人ほどがコミュニティを形成している。」
もう300人以上も拉致してるのかよ、警察頑張れよ。残りはなんだよ、殺されたんか。
「この世界はとても長い期間、魔物たちに領地を奪われつつあった。地球人たちは我々に協力をしてくれている。今は進行を食い止めるどころか、押し返つつある。感謝してもしきれない。」
これ魔物って平和維持軍的なやつじゃね。300人も人質がいたら国連も止まるのか。
「詳しい話は地球人同士の方が良いだろう。明日馬車を出す。今日1日になるが、ゆっくりしていってくれ。」
明日には監禁所行きってわけですね。
「本日の身の世話は私とそこのリロが務めます。何なりとお申し付けください。」
メイド長と女の子はそっと一礼した。この子はリロって名前なのか。ロリの逆と覚えよう。
割と丁寧に扱ってくれるようだ。今日は。
「混乱しているだろう。客間でゆっくりするといい。」
おっさんがそう締めると、女の子が部屋から出るように促す。
そっと一礼して部屋から出ると、女の子は俺の一歩後ろにつき止まる。
女の子は多分、俺の行くところについてくるだけなのだろう。女性経験値0の俺的には、引っ張ってくれると嬉しいんだけどな。
「トイレってどこにあるの?」
べつにそんなに行きたいわけじゃないけど、この微妙な空気に耐えれなかったんだよ。
「付いてきてください」
ロ、リロはトイレまで案内してくれる。
「こちらです。」
2分くらい歩いた。遠い。
トイレには異臭が漂う、深い穴が1つあるだけだった。
これはキツイ。トイレットペーパーすら置いてないのか。大きいのってどうやってやるんだろ。
小便を済ませてトイレを出る。もちろん手を洗う場はなかった。
トイレを出てやることもなくなった。
トイレの前で止まり、気まずい空気が流れる。
「自分の客間ってところに案内してくれる?」
この空気に先に根を上げたのは俺だった。
「こちらです。」
元の道を戻って客室に戻る。
女の子が部屋の掃除していた。最初に部屋を出て行ったほうだと思われる。
今気がついたがこの女の子達顔が似てる。
ロリが妹だろうか。少しだけ背が高い
「お、おじゃまします。」と一言断ってから部屋に入る。
特にやることもないので学ランを脱いで横になる。あと鬱陶しいのでベルトもとる。
「失礼します。」
女の子 (以下姉)はそう告げると俺のズボンを脱がそうとする。
「うおっぉお、え、なん?」
「仕事ですから」
必死にズボンを掴むがこの子力強くないか。
なんとか振り払う。
「何してるん!?」
ベッドの端まで逃げて強めに問いただす。
「私たちはメイドです」
「私たちには性処理も含めてご命令を授かっております」
ロリ、姉の順にこんなことを、一切顔色を変えずに言ってのける。
改めてここの治安の悪さと言うか、日本との違いを目の当たりにする。
ロリは服を脱ぎパンイチの状態だ。
俺はロリから目が離せなくなった。
決していかがわしい理由ではない。
あばらが浮き出て腹部は膨らんでいるのだ。テレビで見たことがある、明らかな栄養不良だ。
つい聞いてしまった。何歳なの?、と。
「私は先日16になりました。リロはもう直ぐ12になります。」
言葉が出ない。日本ではまず見ない光景だ。
人が、ここまで栄養失調なのを見るとは。
それに俺もこうなると思うと固まってしまった。
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