第1章 異世界

第1章-1 ラブレターに騙された  

「先生」


「お、ハロー。結局どこ行くん?」


 高校3年生の3月半ば。俺は高校へ進路先の大学を伝えにきた。

 職員室の中、軽い口調で返事をくれたのは、担任のナミちゃんである。


「あー、後期でなんとか地方の国立受かったけど、やっぱ地元の藤宮学院いくわ」


 さりげなく国立にも受かったことをアピールしつつ、進学先を伝える。

 担任にとってクラスからの国立合格者数は大事らしい。


「じゃあこの紙に進路先と合格大学全部書いて」


 ナミちゃんが差し出した紙に、合格大学を書き出し、藤宮学院に丸をつけて出した。

 もう高校に来ないと思うと感慨深いが、特にすることもない。

 プリント提出したら即帰宅だ。




 下駄箱にそれは入っていた。白い封筒だ。


  {ラブレター}


 脳裏に浮かぶのは、クラスでかわいいく話しやすい、天使のあだ名を持つチカちゃん。

 普段呼ぶときは苗字にさん付けだけど。


 それか進学先が同じ、ともみん。




 じっくり3分は手に持ったまま固まってから、意を決して封筒を開く。

 中には硬い紙が1枚入ってるようだ。カードのようだ。


 今になって周りを見渡し、近くに誰もいないことを確認してから、カードを引き抜いた。




 そこには……


――変な図形があった。そう、魔法陣のような。




 意味がわからない。

 凝ったイタズラに肩を落としつつ、封筒ごと捨てようとした。封筒が光っているのに気がついた。

 なんとカードが光っているではないか。


 最近の文房具ってすごいな。


 カードの光が急に強くなり、意識も刈り取っていった。


 ついでに異世界に飛ばしてくれなさった。

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