ヤバい女のSS集

木下地下

私を、汚して

私を抱く男は、皆煙草を吸う。

いや正確には、私は煙草を吸う男にしか抱かれたくない、だろう。


私は煙草の煙が好きだ。

身体を貫く性行為のそれよりも、よっぽど私を汚してくれるから。


私は自分の美しさを知っている。

生まれた時から可愛い、綺麗と言われる人生だった。


いつからだろう。

この身体に副流煙を溜め込み続けたのは。


「ねぇ……煙草の煙、顔にかけて……」

性行為が終わった後には、いつもこう言っていた。


歪んだ感情がぐるぐると巡る。

汚してほしい、私の綺麗な体をいろんな男に支配されたい。


幼子に父から受けた性的虐待の傷は。

そうすることでしか、私の見えない汚れは消せないから。


今日も煙草の煙を求めて。

私の中にある、父親という呪いのモル濃度を減らすために。

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