各陣営模様①
アリスによりレグノール選帝公家の現当主である“イルジード=ザルク=レグノール”が
もちろんこの未曾有の事態にレグノール選帝公家は蜂の巣をつついたような騒ぎとなり、レグノール一族もまた同様であった。
レグノール一族は竜神帝国を代表するような大貴族であり、分家だけでなくその分家も爵位を持ち、ある意味レグノール選帝公家自体が竜神帝国内において選帝公家を中心に半独立国家を形成している。
貴族にとって
なぜなら、
貴族にとって
「お姉様が……
ルーティアは小さく呟くと兄であるレナンジェスも静かに頷いた。
「そういう事だ」
「お兄様はどうなされるおつもりですか?」
「どうとは?」
「お姉様を見捨てるのですか?」
ルーティアは不安気にレナンジェスに尋ねた。アリスが
アリスの実力は高く評価しているがそれでもイルジードの私兵である
「ルーティア……
レナンジェスはルーティアに言う。ルーティアは兄の言葉の意図が分からず首を傾げた。
「父上から聞いた話によるとエクレスは死んだそうだ」
「え?」
「しかも一人ではなく部下達も全滅だったらしい」
「……それはお姉様がやったと?」
ルーティアがやや呆然としてレナンジェスに尋ねる。
「そう考えるのが普通だな。俺も父に尋ねたのだがエクレス達が全滅した場所は、クディール森林地帯を出てすぐの所だ」
「クディール……たしかリーリア伯母様が……」
ルーティアの言葉にレナンジェスは静かに頷くと即座に言う。
「そう、リーリア伯母様が殺された場所だ。
「そしてお姉様を発見し返り討ちにあった……と?」
「問題は
「つまりお姉様は勝算があって……いえ違いますね。やはり私達を断罪するために戻ってきたと言う事ですね」
「そういう事だ。ルーティア、今回の
「な、何故です!?」
レナンジェスの言葉にルーティアは驚いた声を上げる。その反応を予想していたようにレナンジェスは静かに笑った。
「お前も知っているだろうが
「はい」
「もし、父が討たれた場合に生き残りを率いる者が必要なのだ」
レナンジェスはそう言って笑う。その笑いには陰があるようにルーティアには感じられた。
「わかりました。ですがお兄様だけに重荷を背負わせる訳にはいきませんので私も参加します」
ルーティアの言葉にレナンジェスは目を見開き声を荒げた。
「それはダメだ。何もお前が戦場に出る必要はない!!」
「お兄様だけに背負わせる訳には来ません。私も咎人の家族なのです。お父様の愚行の責任は私達家族で背負うしかありません」
「俺はせめてお前だけには生きていて欲しいのだ」
レナンジェスがルーティアの頬を撫でながら言う。しかしルーティアはまっすぐにレナンジェスを見て言う。
「お姉様は決着をつけるために
ルーティアの言葉にレナンジェスは痛いところをつかれたような表情を浮かべた。ルーティアの言う通りにレナンジェスは贖罪の形としてアリスに討たれるつもりでもあったのだ。
だが、それは単なる自己満足でしかない事をルーティアに指摘されたのだ。
「……確かにそうだな。結果がどうなるにせよそこに至るまでの過程を軽んじてはならんな」
「はい……」
レナンジェスの言葉に力がこもる。先程までの陰のある表情ではない。全力を尽くしてどのような結果をも受け入れるという気概がそこにはあった。
それを見てルーティアは顔を綻ばせた。
(お姉様、私達は全力をもって戦います。それがお姉様への誠意です)
ルーティアは心の中で呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます