竜神帝国篇:プロローグ②

 シュレイとアンジェリナがアマテラスに加入してからすでに二ヶ月が経過していた。シュレイとアンジェリナは無事ハンター試験に合格し、現在スチールクラスのハンターとして活動中である。

 また、アディル、ヴェルはゴールドに見事昇格、エリスはプラチナ、エスティルとアリスはシルバーのままであるが、もうすぐ昇格試験に必要な分のポイントが貯まることで試験を受けることが出来るようになるのであった。


「よし、報酬も無事得ることが出来たな」


 アディルの言葉に全員が頷く。今回のアマテラスの任務はアンデッドの討伐であった。そのアンデッドはヴァトラス王国の西にあるエルケンス王国との国境沿いにある朽ち果てた砦にリッチが住み着きその討伐であった。

 リッチは魔術師がアンデッド化したものであり生前の記憶を持った者も多い。今回、アディル達が討伐したリッチにも生前の記憶があり、自らの魔導の探求のために自らアンデッドしたのだが、アマテラスの前にはまったくの無力であった。

 なぜならアディルの五行の気による魔術の相殺、アリスの魔力を吸収するヴィグレムは魔術が戦闘の基本においているリッチにとっては天敵だったのだ。


 有利な状況で戦ったアマテラスはリッチを文字通り一蹴したのであった。


 王都に戻ったアマテラスはギルドに向かい任務達成の報告を行い、報奨金を受け取ったのだ。


「さぁ兄さん!! これからデートにしましょう♪」


 アンジェリナがシュレイの腕をとると満面の笑みを浮かべてシュレイに言った。その際にアディル達に視線を移す。その視線には“邪魔しねぇよな?”という感情が過分に盛り込まれておりアディル達は即座に頷いた。


「しかしな、次の任務の準備をすべきじゃないのか? アディル達だけに任せるというのも良くないだろう」


 シュレイの言葉にアンジェリナはアディル達を見るとアディル達はやけに目の据わっているアンジェリナの視線にゴクリと喉をならした。


「シュ、シュレイ……前回はお前達が準備をしてくれたんだから、今回は俺達がやるよ」

「しかし……」

「気にしないでくれ。兄妹で仲良く楽しんでくれ」


 アディルはシュレイににこやかに笑いかける。シュレイは少しばかり気の毒そうな表情を浮かべる。


「そうね。私達としたら前回は二人がやってくれたから今回は私達がやるのが筋というやつね」


 エリスも賛同するとシュレイはようやく納得の表情を浮かべる。


「わかった。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ。アンジェリナ行こうか」

「はい♪」


 シュレイの言葉にアンジェリナは顔を輝かせて返答するとシュレイの腕をとって歩き出した。二人に対してアディル達はニコニコと微笑みながら見送った。シュレイとアンジェリナは人混みの中に消えていった後にアディル達は安堵の息を吐き出した。


「アンジェリナ……怖ぇよ……」


 アディルの言葉にヴェル達は同意とばかりに頷いた。アンジェリナはシュレイが絡むと途端に狩人の目をするのだ。しかも凄腕の!!

 ちなみにアンジェリナはシュレイが絡まなければ本当に常識人で仲間想いの少女なのでアディル達の信頼は厚いのだ。


「まぁあれも恋する乙女ゆえと言う事にしておきましょう」


 エリスの言葉にアディル達も頷いた。あまり触れるのは避けようというのは処世術というものである。


 アディル達はその後、次の任務のために消耗品をいくつか買い込んでジルドの店に戻ったのであった。



 *  *  *


「おお、お帰り」


 店番をしていたジルドがアディル達が帰ってきたのを確認すると顔を綻ばせて迎えの言葉を言う。


「「「「「ただ今帰りました」」」」」


 アディル達は声を揃えてジルドに返答するとジルドは顔を綻ばせる。


「あれ? シュレイ君とアンジェリナちゃんは?」

「あ、デート中です」


 アディルが即座に返答するとジルドは苦笑する。アンジェリナとアディル達がどのようなやりとりをしたのか想像したのだろう。


「そうか、そうか。若いというのは良いねぇ」

「いや、あのやりとりを考えればそうとばかりはいえませんよ」

「しかしシュレイ君もアンジェリナちゃんのような可愛い子に迫られれば男としては嬉しいんじゃないかな?」

「まぁ、アンジェリナは確かに美少女ですけど……ね」

「ははは」


 アディルの返答にジルドは乾いた笑いを発した。アディルがアンジェリナの事を美少女と称したことに対してヴェル達の機嫌が急降下した事を感じたのだ。もちろん、アディルが美少女と称したが音声化していないが、“残念な”という項目があるのだが、それはそれ、これはこれという所である。


「あ、そうそう、アルダード君から連絡があったよ。毒竜ラステマの尋問が終わったと言う事だよ」


 ジルドの言葉にアディル達は視線を交わした。そしてそれぞれ今までの雰囲気は変わる。


「いよいよだな」

「ええ、いよいよね」


 アディルの言葉にアリスが頷くとヴェル達も頷く。


 アディル達の次の任務が決まったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る