No problem

ぺむぺむ

第1話

 色素の薄いさらさらのミディアムヘアを風に靡かせ、花は俺の隣を歩いている。少し遅い彼女の歩にあわせるようにこちらも少し遅く歩き、重たそうに首に掛けている通学鞄を代わりに持ってやる。眠たそうな目尻の下がった目が更に少しだけ下がり、

「ありがとう」

 彼女は言う。

 これはこれで満足で、俺は目を逸らして空を仰ぐ。

 空には雲ひとつない、快晴のある夏の日。


 今、学校では体育祭という、聞いただけで疲れるような行事を行おうと準備をしている。クラスの全員が競技参加しなければいけないので、渋々選んだのが砲丸投げ。この競技を選ぶのはだいたい力持ちの体育会系か、面倒くさがりだ。

 私は机の上で腕枕して、外に目をやる。日差しが燦々と当たり続けている校庭で、一年生達がリレーの練習に身を呈している。思わぬ眩しさに目を細めると、視界を遮るように幼友達の紳が現れた。毎朝会っているが、クラスが違うので休み時間にいつもやって来る。やってきても何もすることはないのだけれど、友人の少ない私を気にかけてくれているのは薄々感じられる。

 開け放たれた窓から入っていた風が紳によって遮断され、体が熱を持っていく。

 逆光で顔が陰になって見えない。


「高山くんは競技何にしたの?」

「リレー」

「ふうん。頑張ってね」

 雨宮花はそっけなくそう言って教室を出て行く。クラスが違うので、昼ごはんのパンを食べ終わったらすぐにここを去り、翌日の昼頃になると風のように現れる。そんな関係は僕にとってすごく心地よくて、一緒にいるだけで穏やかな気持ちになれる。

 そんな雨宮さんに幼い頃から仲のいい異性の友達がいると聞き、何故だかその友達がとても羨ましく思った。こんなそっけなくても、雨宮さんはとても優しいのだ。

 僕は机の中から教科書とノートを取り出した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る