大砲鋳造法

 ナポレオンを中心とした大嵐が吹き荒れるヨーロッパはネーデルランド、リエージュという所に、ヒュギューニンという猫がいた。

 彼は軍猫であり、当然数々の功績をあげ、ロイク製鉄せいてつ大砲たいほう鋳造ちゅうぞうしょの所長に任命されるまでになった。

 彼は

「一から大砲を作れる『トリセツ』みたいニャの、書いたら大量生産できるんニャないかニャ」

と、『ロイク製鉄大砲鋳造所における鋳造法』という本を書いた。




 舞台は日本の佐賀さがに移る。

 佐賀藩主である鍋島なべしま直正なおまさは、アヘン戦争に衝撃をうけていた。長崎ながさきの警備を担当していた彼は

「対抗するために、我々にも大砲が必要にゃ」

と、大砲を製造しようとした。

「しかし、わしらにそんにゃのできますかにゃ?」

 たまたま製鉄技術を持っていたために呼ばれた職猫は、担当者にそう尋ねた。

「安心するにゃ。殿様からこんにゃ本をもらってるにゃ」

「うにゃ、どれどれ……」

 その本は、オランダ語で『ロイク製鉄大砲鋳造所における鋳造法』と書かれていた。




 こうして独力で反射炉による大砲鋳造に成功した佐賀藩は、幕末において独特の位置に立ち、猫ではなく技術によっていわゆる「薩長土肥」の一角になるのだが、は別の話。

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