魔法少女 タカハシ☆ヒロノブ

八城

プロローグ

「タカハシヒロノブ29歳童貞」


 皆さんは童貞だろうか?


 俺は童貞だ。しかも29歳。



 顔はそこまで悪くない。だが性格があまりよろしくない。わけではない。


 性欲がないわけでもない。むしろ29年間貯めてきた性欲が今にも爆発しそうだった。

 スカートを短くしている女子高生、谷間をチラつかせる大人な女性、発展途上の女子小学生、もう女を見るだけで今にも襲いたくなってくる。




 あぁ、おっぱいが揉みたい…あれはどんな柔らかさなんだろうか…


 あぁ、キスがしたい…舌を入れるとは一体どんな気分なのか…


 あぁ、俺の剣を女の鞘に収めたい…どんな気持ちよさなのだろうか…



 想像しただけで胸とあそこが膨らむ…



 しかしながら俺には度胸がない。

 気になるあの子に告白することも、いい姉ちゃんをナンパすることも、はたまたそういうお店で卒業することも出来なかった。



 彼女が欲しい…。生まれて29年間、一度も彼女というものをもったことがない。

 別に告白されたことがないわけでもない。さっきも言ったが顔も性格も悪くない。それなりにモテる。

 が、俺はこう、運命の相手というか、自分が好きにならないと付き合いと思えない。妥協したくなかった。


 足が細くて、体も細くて、でもおっぱいがあって顔も可愛いくて、性格も優しくて、家事もできる、

 そんな存在もしないような女性と付き合いたかった。というか結婚したかった。俺の運命のお姫様が現れるのを待っていた。


 しかしながらもう自分は20代を終える。

 人生の中で最もチャンスがあったであろう20代が終わるのだ。

 親にも心配され、友達は結婚し子供までいる。

 完全に取り残されていた。




 そして今日8月9日。誕生日の8月10日の前日。つまり20代最後の日についに童貞を卒業しようとこの場所にやってきた。


 看板には「ぺろあん学園」と書いている。

 風俗だ。


 一度経験すればなにか変わるかもしれない。というか

 今後、もしヤる機会があったとして童貞は恥ずかしい。

 もう初めては好きな女の子とか、そういうプライドを捨てなくては今後のためにはならない。


 ドアの前に立つ。俺のアソコもビンビンだ。


 ドアノブに手をかける。このドアの向こうには未知なる世界が広がっている。


 この先には俺の足りないもの全てが待っているような気がした。

 とにかく今この場所に立ってからはとにかくヤりたい気持ちしかない。

 早くヤりたい。気持ちよくなりたい。



 しかしなかなかあと一歩が出ない。

 本当にここで済ましていいものなのか、後悔しないのか、むしろここまで守ってきたのだから、これからも守り続けるべきなんじゃないか。


 そんなことを考えドアノブに手をかけ5分が経過した。このままここにいるのも恥ずかしい。

 いい加減覚悟しろ。俺。



(…よし。8月9日。本日をもちまして、私タカハシヒロノブは、童貞を、卒業いたします!!)



 いよいよ決意を固めドアを開けようとしたとき勝手にドアが開いた。

 前に入っていたお客さんが出てきたのだ。


 つい反射的にドアの裏に隠れてしまった。出てきたのはどこにでもいそうな普通の眼鏡をかけたデブのおっさん。年齢は恐らく40歳くらいだろうか…。



「ふう…やっぱりしおりちゃんのテクは最高だったなぁ…あいつにバレてなければいいんだけど…」



 そう言いながらおっさんは遠く彼方へ消えていった。


 あいつ…?

 あいつと言っていたがあのおっさんには彼女はいるのだろうか、結婚しているのだろうか、子供はいるのだろうか。

 いるとしら何故こんなところで自分の性欲を晴らしているのだろうか。

 奥さんじゃ物足りないってか?俺は29年間も我慢してきたのにあのおっさんは相手がいるのにも関わらずこうやって性欲を晴らすためにここに来てあんなことやこんなことをしてるのか?


 俺は性行為は愛がないとやってはいけない。そう思ってた。

 ただ性欲のままに女と性行為するなんてサルと同じだ。

 俺はサルじゃない。

 相手を選ばず、誰でもいいから性行為するなんてやっぱりダメだ。

 サルになるくらいなら、自宅に帰って自慰行為してた方がマシだ。



「何がペろあん学園だよ…」



 そう呟き自宅に帰って自慰行為することを決意した。

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