第24話

ハーフタイムで体力を取り戻した洋介に再びドリブルのキレが蘇(よみがえ)る。


 見れば見るほど上手さが際立つ。

 

 おそらくフットサルでも攻撃のタスクを任されていたのだろう。瞬間的なスピードは今まで会った誰よりも早かった。スピードもさることながらボールを置く位置がお手本のようだった。そのボールコントロールは一朝一夕で身に付くものではない。

 パスが来たときのファーストタッチで洋介は次の動作に繋げるために最適な場所にトラップしてボールを置く。これは簡単に出来ることではない。

 それを可能にしているのが足裏でのトラップだ。慣れない人がやれば上手くいかないのだが、慣れ親しんだそのスタイルは彼の大きな武器だ。彼のドリブルを活かす大きなファクターでもある。

 彼のストロングポイントはドリブルだけではない。


 ストライカーにとって重要なことは点をとる能力。つまりはシュートセンスだ。

 洋介のシュートはとにかく速い。

 何が速いかと言えばすべてとしか言いようがなかった。


 ペナルティエリア付近でその真価は発揮する。

 ボディフェイントで逆をつき、チョンとつつくようにボールを相手と逆にずらす。自分がシュートを打つ時にワンステップの踏み込みでシュートが出来るそのベストな位置にボールを置き、一瞬で振り抜く。

 シュートの時、膝から下がありえない速度で振り抜かれる。シュートモーションはコンパクトで速く、ボールの芯を的確に捉え無回転に近い弾道で放たれる強力なシュート。


 ヤバい…凄い…


 どうしよう…負ける…


 何か手はないかと考えていると左のサイドハーフをやっていた野球部の中西君が声をかけてきた。

「すまん。俺じゃ攻めきれない。実は小学生の時サッカーをやってたんだ。センターバックだった。あいつは俺が止めるからお前は点取ってくんないか?」

 スコアは0-2で負けている。点は欲しいがこれ以上の失点はまずい。

「わかった。でもひとまず俺と二人でセンターバックを組んでみよう。任せられそうならすぐにでも俺がサイドハーフに上がるよ。」

「なんだよ信じてねえなお前。すぐに攻めさせてやっからちょっと待ってろ」

 自信満々の中西君は確かに上手かった。状況によって攻撃を遅らせたり、半身で片側を切りながらサイドに追いやったり、むしろ俺より上手かった。


「もういいだろ?さっさと点取ってこいよ。負けるのは嫌なんだよ!」

 確かにこれなら大丈夫だ。体育の授業とは言っても俺だって負けるのは嫌だしね。

 思いの外上手かったのでついでにもうひとつお願いをして俺はサイドハーフではなくトップ下にポジションを変えて反撃を開始した。

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