第3章 ガトリングコミッティー・ストライクス・アゲイン トリプルアゲイン
大量殺戮兵器に立ち向かった武士に憧れる僕の気持ち、幼なじみのユウリなら分かってくれるよね
高校生っていうのは小説やアニメの主人公としては極めて使いやすい。
おそらくそういった作品のユーザーの年代だからというのが一番の理由かなと思う。
けれども、もうひとつ、重要な理由があると僕は感じる。
それは、『選択肢の幅が広い』、ということだ。
社会人を主人公にすると仕事に物語が縛られる。小学生や中学生では幼すぎて保護者に行動が縛られる。大学生では新鮮さがやや失われる。
高校生ならば、物語として学校に集まっている人間の多様さや、義務教育でもないので学校から離れた突拍子もないエピソードもある程度組める。
更に進めて、物語の幅が広げられる究極の設定は、『異世界モノ』なんだろう。
なんでもありだから。
自分自身が高校生である僕も、本来は選択肢の幅があるっていう特権をもっと自覚してそれらしく振舞ったり、異世界モノを読み込んだりすればいいのかもしれない。
けれども、なぜか、僕は、選択肢のない状況の方に興味を持ってしまうのだ。
きっかけは、『ガトリングコミッティー・ストライクス・アゲイン』、っていう、とある女子大生のネット投稿作家がサイトに掲載した、小説のプロット的な短文だった。
あらすじは、こう。
戊辰戦争に従軍した朝廷側のある武士とその部隊が、『ガットリング砲』という、アメリカから輸入された当事最新の大量殺戮兵器に遭遇する。エンフィールド銃と銃口に装着した剣とで彼らは果敢に、武士らしい知略と勇武でもって実戦に挑む。
僕は、ガットリング砲を輸入して撃った側主観の小説は読んだことがあった。今は亡き超有名作家の超ベストセラーだ。当時の時代でありながらクリエイティブなことをやり続けた武士を描いた小説だった。ガットリング砲の輸入もその1つ。
けれども、僕は、この女子大生が投稿した短文がとても気にかかった。
「たぶん、この銃剣でガットリング砲に立ち向かう武士は、この女子大生の先祖だよ。実在の人物なんだ」
僕は同じく小説をよく読む仲間であるクラスメイトに語った。ちなみに、男子ではなく、その子は一応、女子だ。
「ヒロオ、それって妄想じゃないの?」
「妄想? じゃあ、ユウリの考える現実って、なに?」
「異世界モノの小説の方が売れてるし、大勢の人に読まれてる、って現実」
「う・・・」
「確かに銃剣でガットリング砲に挑む武士は、事実その女子大生の先祖かもしれない。戊辰戦争当時にガットリング砲が実戦配備されてたのも史実だしね。でも、事実と現実はリンクしない。異世界で都合のいいディテールが設定されるのは虚構だけど、そういうものの方がアニメになったりして世の人を楽しませる力があるのは、現実」
「ユウリ。昔はもっと僕に優しかったのに」
「幼なじみだって思うからズバッと言ってあげてるんだよ。ヒロオはどうしたいの?」
「自分勝手に選べる道じゃなくって、使命、っていうのかな。義務ともいえるというか、自分が本当にやらなきゃいけないことを早く絞り込みたいんだ」
「どういう意味?」
「この銃剣で戦った武士は、武士として生まれたことも、子供の頃から弛緩せずに鍛錬を積んだことも、敵地へ戦争に行くことも、大量殺戮兵器に対してほとんど白兵戦で挑むことも、すべて、責任感をもって使命や義務としてやり遂げたことじゃないか。選択肢がないんだよ。なのに、『儂はあるべきところに帰った気がする』、って言って殉死するんだ。清々しいんだよ、この武士の人生そのものが」
「うーん。なんとなく分かる気はするけど・・・」
「ユウリなら分かってくれるよね」
「でも、めんどくさい生き方したがるね、ヒロオって」
「でさ。ちょっと付き合って欲しいところがあるんだよね」
「え? どこ?」
「八幡神社」
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