終末感覚<断崖の詩>

@yuoiwa

悲しみ

ベッドに横たわる一人の美しき者

まぶたを閉じ 満たされぬ想いの中にまどろむ人

日が傾き 明かりのないこの部屋にも暗闇が流れ込む

光を失い 指の先から足の先までを硬直させ

寄り添う者も無く 見守る者も無く


その時だ

閃光が部屋の中に解き放たれ

まぶたが開かれ 赤い瞳がその姿を現す

全身が硬直し 震え 赤と黒の血流がその鮮やかな色を白い肌に浮き上がらせ

すじは張り 喉を鳴らし

苦痛とも恍惚ともつかぬ表情を浮かべ

横たわる美しき者の内部から

その秘められた全ての 怒り 悲哀 衝動 渇望 そして狂気が

七色の光の奔流に包まれて解放される


首筋に出現した皮膚の裂け目が瞬く間に全身に走り

内なる神秘のつたが噴出し 部屋の隅々に飛び散り

ほとばしる鮮血が視界を埋め 内臓が沸騰し 破裂し

エネルギーの流れが駆け巡り 光が破裂し

赤黒いつたが手足を巻きとり 身体をぶち破り


狂気の爆発は恍惚と少しの恐怖を呼んだ

全てが破壊され そして全てが創造された

様相は一変した まさしくその者の隠された欲望によって

狂気によって


そして夜が明ける

柔らかな光がカーテンの隙間から部屋に差し込む

新たな感触が伝う

その者は解放された

解放された!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る