星降る夜に

Null

第1章 流星の奇跡

第1話 出会い

 微かな灯りが照らす住宅街。

 誰も出歩かない、夜の街。

 そこに、ひとつの影があった。


『今夜は各地で流星群が見られるでしょう…』


 テレビではそんなことを言っていた気がする。いや、俺は気にはならない。


 一人、考え事をしながら足を運んでいた。

 どこへ行くとか、そんな明確な目的はない。

 俗に散歩と言うやつだ。

当てもなく、ブラブラ…ブラブラと。


散歩をしながら今の生活を振り返ってみる。この生活は、意外にも最近に始まったものだ。

…悪くない。十分じゃないが、悪くは無い。

でも、やはり何かが足りない。


 そう感じる。



 ◆



 しばらく、そのままあてもなく歩いていた。

 それは、星がよく見える空だった…

 小さい時は、こうやって夜に出歩いて、空を見上げたりはしなかった。

 いつも下ばかりを見ていた。


 いや、今でもしない。

 故意に見上げた訳じゃない、無意識に見上げたんだ。


「綺麗、だな?」


 誰もいないのに、誰かに語りかけるように独り言を呟く。

 何故だろう、自分でも疑問に思った。

 その時であった。


 ガサッ


 近くの茂みから物音がした。

 この住宅街には、結構自然があるのだ。

 故にちょっとした茂みから動物が、なんて事もよくある。


 ただ、物騒なこの世の中だ。

 茂みから通り魔が出てきてもおかしくはない。


 ひょこ、と顔を出したのは…全体的に灰色をベースとした動物だった。

縞模様の尻尾をしている。暗くてそれくらいしかわからない。

 少し驚いて、1歩、2歩と後ろに下がる。


 俺は正直、動物には詳しくはない。

 せいぜい覚えてるとしたら、頻繁に目撃される動物とか、犬とか猫とかうさぎとかその辺だ。

 この動物は何度か見た事はあるけど…なんだっけ?



 ◆



 突然、空が明るくなった。

 いや、『光を発するものがこちらに近付いてきた』と言った方がいいのだろう。


 俺は驚嘆した。そして絶句した。

 現実的にありえないことが起こっていると。


「なんだよ、これ…」


 間違いなく、流星群は観測できた。

 が…その流星の欠片なのだろうか。

 その光を放つ『星』が。


 こちらに近づいて──いや、落ちてきている。


声が出ない。恐怖のあまり叫びそうなのに、出ないのだ。

体が動かない。金縛りにあってしまったかのように、もしくは、メデューサに睨まれ石化してしまったかのように。


第六感が危険だと言っているのに、何も出来ないのだ。


そのまま星は、段々と目前にまで迫り──



 ◆



「大…夫……か?」


「し、し…かり……のだ!」


 誰かの声が聞こえる。

 その声に導かれるまま目を覚ます。


「う〜ん…?」


 そこには、一人の少女がいた。

 グラデーションがかかったような配色の髪をしていて、こんな冬だけど短袖で比較的ミニなスカート。

少女は横にかがみ、戸惑いながらも呼びかけていたのだ。


 この出会いから、物語は始まる。

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