呪血ノ姫
@moonbird1
第0滴 プリシア1
邪険にされていることは、分かっていた。
それはひとえに、私が「引き寄せてしまう」体質だからであることも知っていた。私の体質のせいで、王都はしばしば魔族に囲われ、そのたびに雇われた封魔師が魔族を祓い、そのたびに父上は憤慨し、私を殴った。
私が悪いことは分かっていた。殴られるのも当然だと思っていた。だけれど、わがままなのは分かっていたけれど、たまにでいいから優しく撫でて欲しかった。生前の母上がそうしたように。私がここを離れる前、グレンがそうしてくれたように。
父上の愛があれば、私はこうはならなかったかもしれない。
紅く濁った眼で、瀕死の父上を見る。全身から噴き出す血を眺める。昔の私であれば、心配して駆け寄ったことだろう。だが、今は違う。
魔族に魅せられた私が父上に近づくのは、無垢な優しさからではなく、その血を貪るためにすぎない。
「ば、バケモノ……」
父上が震える唇でそう言った。対抗しようと構えた鋼の剣すら、血が飛び散って私の食欲を刺激した。
「そんなことを言わないで? 私は、あなたの娘よ」
「貴様など、娘ではないわ――その高い魔法力ゆえに、魔族に――ゴホッ」
父上が血反吐を吐いた。そのきれいな血の色は、王の威厳を示す赤いカーペットとは同化しない。
「もうしゃべらないで。死を早めるわ」
「わしを――眷属にするのか」
その質問は、死後の不安というよりも、生への執着のように聞こえた。幼い頃尊敬していた王は、ただの臆病な暴君に過ぎなかった。
「――いいえ。あなたに待っているのは、永遠の暗闇」
「ごっ」
手刀で父親の首を切り落とす。噴水のように飛び出し止んだその血は、王族の一瞬の隆盛を暗示しているように思えた。
「愛してくれなかったから悪いのよ」
右手にこびりついた紅。自分にも流れているはずの血の味は、恐ろしく不味い。
王都は一瞬にして陥落した。復讐もあっけなく終わった。私にすべきことは、あと1つしか残っていない。
「どこにいるの? グレン――逃がしは、しないわ」
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