3 『青いセサミ』

すてられたセサミの青いぬいぐるみ

車寄せを背にしてちょこんと座って

空を見上げている

だから僕は彼を拾うのを辞めた

誰かの落し物なんじゃないの、と

後で君に言われたけれど

君は彼を見てないから言えるんだと

声に出さずに呟いた


その日

職場のベッドが一つ空になった

僕はまたその部屋を

うめなければならないから

真夜中にカサつく書類をめくっている

あの部屋の壁には大漁旗を手にした

漁師たちが

飾られていたが今はもういない

安らかからほど遠い顔が瞼をちらついた

漁師たちは何処で死にたいのだろう


濃いローストの珈琲の苦味が

眠気ごと全て塗り潰した


あのベッドを

また誰かがあたためる頃になっても

セサミの青いぬいぐるみはそこに居た

昨日の雨で濡れて泥が顔を汚していた


セサミの青いぬいぐるみは青空を見上げて

何処か満足そうだ

汚れた姿は生きた証で大切な場所を守る姿が

そこにあるように思ったのは僕の気の所為

それでも

自分勝手な気持ちの幻想だとしても

彼を拾う気にならなかった


言葉もなく、涙もない、僕は笑うしかない

悪くない気分だと帰って君に笑いかける

僕の居場所で

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