第13話 女医
「……セスくん」
「…はい」
「十分に寝ていませんね?」
「…はい」
ここでユルリカは立ち上がり、セスの前に立った。そのままセスのほっぺをぎゅむっとする。
「
「ぜったいれふ……」
「よろしいです」
「……あの………」
なんだか見てはいけない物を見てしまったのうな気がしたので俺はとっても遠慮がちに声を掛けた。
「俺外で待ってちゃだめなんですか」
「いえいえ、ここにいて下さい」
「ええー…」
何故か解らないけど俺はあのあとすぐに呼ばれて、診察室に一緒にいてくださいと言われた。別に深刻な話な訳ではなさそうだけど。
「…ふむ。まあ疲労以外には特に問題はないでしょう」
「なんだ…よかったです」
「さて、アカリさん」
「…なんスか?」
するとユルリカさんは俺の方に歩み寄り、俺の手を取った。
「あの……?」
果てしなく嫌な予感がする。
ユルリカさんはにこーっと笑って俺の手を撫で回し始めた。
「今後の参考に、調べさせて頂いても?」
「あんたもか!!」
このタイプの人多すぎないか。
*****
どうにか服の下までは勘弁してもらった。十分ユルリカさんは満足げでした。
帰り際、ユルリカさんがセスくんに薬を渡した。そして小さくこう言ったのが聞こえた。
「レティに、またそろそろ来るようにと伝えて下さい」
「あ、はい」
「…レティがどうかしたんですか。みんな、何を隠してるんですか」
「それは…」
「俺は、信用できませんか」
するとユルリカさんは複雑そうな顔をした。悲しそうなやるせないような…色んな感情が混ざっていた。
「…レティに、直接聞いてあげてください」
「っ!先生…!」
セスくんが慌てたように声をあげる。
「この子は信用できる、そうでしょう?」
「もちろん信用してます!けど、この話は…」
ユルリカさんが俺に向き直る。
「アカリさん」
「…はい」
「レティを大事に思ってくださるのなら、あの子を守りたいと思ってくださるのなら、聞いてあげてください。辛い話です。覚悟が無いのなら、絶対に聞かないで」
そう言うユルリカさんの瞳は悲しみに満ちていた。
正直、レティは俺なんかに守られなくても十分強いと思うんだけど、俺自身が思ってたよりも俺はレティのことが大切だったらしい。
だって、即答していたんだ。
「聞きます」
言葉が詰まりながらも溢れた。
「聞きます。覚悟はあります。俺なんかで、俺でいいなら、いくらでも守りますから」
ユルリカさんとセスくんは驚いたように目を開き、そして安心したように微笑んだ。
*****
「…ありがとう。アカリくん」
「…別に、そんな」
セスくんの家に着いて、ドアを開ける前に、小さな声でお礼を言われた。
レティはまだ寝ていた。起きたら、明日になったら、タイミングがあったら聞こう。
なんて、甘えたことを俺は考えていた。
明日のことなんて誰にも分からないのに、なんでそんなこと思ってたんだろう。
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