第11.5話 余命宣告者の憂鬱
サァ、と粉薬を喉に入れ、水で流し込む。1、2、そして3種類目を飲んで、そのまま空になったコップを机に置いた。
うんざりだ、とでも言うように溜息をつき、薬包紙をグシャリと丸めて部屋の隅のゴミ箱に投げる。しかし、トンッと音を立ててゴミ箱のふちに当たり、紙くずと成り果てたそれは床に落ちてしまった。
「ああーもう…」
拾おうと思ったが、体がだるい。先日動き過ぎたせいだろうか。ここ数日、全身が鉛のように重く、ゆっくりとしか動けない。
実は、半年ほど前に余命宣告をされた。重い心臓疾患だ。いい加減死ぬんじゃないか、と毎日毎日考えている。
効果のある薬も無い。さっき飲んだ薬も、せいぜい血管がつまらないように血の巡りを良くするくらいの効果しか無い。
治す方法は、たったひとつ。たったひとつだけあるが、死ぬまでに完成するかも分からない。
ただ、ゆっくりと死に向かう。
本当はもう、生きることは諦めているのだけれど、自分のことを大事に思ってくれている人が少しだけいるのだ。その人たちの為に、1日でも長く永く、生にしがみつく。
この日々は、いつまで続く?
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