ミサンガの話

水分活性

第1話


もうすぐ針が動き出す。

様々な伏線と設定が盛り込まれた壮大な物語が始まる。

その主人公は、僕ーーといいたかったけど違う。僕はこの物語の主人公が肌身離さず身に付けている伏線の一つだ。正確にはミサンガ。そう、願いが叶えば切れるって言うミサンガ。主人公である哲(テツ)の後輩の女の子(恋人ではない)が作って、先輩にって甘酸っぱい渡し方をしてテツの手に付けられることになったミサンガだ。ミサンガって名前長いから僕の事はミサって呼んで。女子じゃないけど。


あ、こんな話してる間にテツが話進めちゃった。なんかワープして別の世界に来たみたい。早速身につけてた衣服はボロボロになってる。僕は無事だけど。イヤーさすがミサンガのミサさんだわ。

お?襲って来た怪獣から助けてくれたイケメンの家にお世話になるみたい。テツがめっちゃ慌ててる。イケメンの家に後輩女子に瓜二つ(可愛い)な子がいる。イケメンの妹らしい。運命的だね。


テツがここはどこなのかと聞いてるけど、どこだってよくない?だって今後とりあえずテストとかもないし、仕事だってしなくて良さそうだよ?前にいた世界よりはいいんじゃない?


あ、あれー?!?!話の展開早すぎー!流石主人公ー!!いきなり勇者とかなっちゃうの!?伏線どこだよー!イケメンと後輩女子似(以下後輩)と組んで旅することになったよ!手袋する時ミサンガ邪魔だって話だけど、これは大切な子から貰ったんだって…おい、お前本家後輩女子のこと好きだったんか。こっちの世界の後輩もお前のこと好きっぽいぞ。流石主人公。


なんやかんや、旅をするうちに村を2つ3つ救って伝説の武器とか手に入れたり仲間増えたりイケメンが死んだりした。イケメンの死はテツと後輩にもかなりダメージがあったみたいだ。イケメンの代わりに割と初期に仲間になった姐さんが活躍してくれてる。そろそろ復活しないとヤバイぞ?テツよ。


ところで僕、この世界に来てから一度も願い事とかかけられてないし、前の世界でも後輩女子が作った時、「テツ先輩の役にたってね///」ってくらいしかお願いされてないから全く活躍してない伏線なんだけど。テツの主人公感が凄すぎてほぼチートなんだよなぁ。イケメン死ぬ前とかにちょっとほつれるとかしとけば良かったかなぁ?いや、だって知らんし。いきなり魔王の手下が来てイケメン死んだし。そんなん予想出来んわ。


これはあれだな。次は姐さんか後輩がヤバそうな時にほつれたり、魔王倒した時に切れてみたりした方がいいよな。切れたら僕のミサンガ生終わりなんだけど。テツ頑張ってるしそれくらいしないとな。


って言ってるそばからー!!!!後輩ヤバイ!!死にそう!!毒くらって死にそう!!!

あ!テツがお願いして来た!!!俺の代わりに後輩助けてやってくれって!!よっしゃ!役にたつぞ!!!

でも切れるくらいしか僕出来ませんけど…。どうしよ。応援するくらいしか出来ない!!後輩!!頑張れ!!死ぬな!!!前の世界の後輩女子よ!!!僕に力をー!!!なんなら毒を僕によこしてくれたらミサンガだから吸収とか出来ないのかな??後輩!!僕に毒よこしなさい!!良い子だから!!!(←?)


なんか頑張ってたら、テツの主人公チート能力が少し僕にも備わってたみたいで、後輩の毒が僕に流れ込んで来て後輩は元気になった。…良かった良かった…

でも僕は毒受けてやっぱりミサンガだから吸収して毒ミサンガ(ってなんだ)になって教会で清められながら燃やされた。これで良かったんよ…テツの願い叶えられたし、人救えたし。ミサンガだし。

ちょっと心残りはテツのその後だね。見守ってやれないのは悲しい。だってずっと付けててくれたし。


「こんなに煩いミサンガは初めてです。」

「!!!????」

「ああ、驚かないで。私は物の神さまです。」

「あ、どうも初めまして。ミサンガです。神さまが僕に何の用でしょうか?」

「あなたの心の声、今まですごく天界まで響いて来て煩かったのですが、聞けなくなるのは少し寂しい気もしてましてね。」


マジかよ!!僕の声筒抜け!?めっちゃ恥ずかしいんだけど。


「それも聞こえてますよ。」

「え゛!?」

「そこで、あなたをまたミサンガとして生まれ変わらせて、また主人公の元に送ろうかと。」

「…訳がわかりません…」

「あなたの冒険ではなく、あなたは実況中継して天界のラジオ的なことをしてくれたら嬉しいです。」

「…いや全く訳がわかりません…」

「あなたは今まで通り、心の中でいろいろ思って、主人公についててやってください。」

「え、それ僕に拒否権は…」「ないですね。」


それから僕は、数々の話に登場し、ミサンガ生を何度も何度も繰り返すことになった。正直何で僕なんだって感じだし、神さまの暇つぶし感満載な訳で、腑に落ちていない。でも何度も主人公(もしくはその近辺主要キャラ)に触れるうち、伏線(フラグ)の神さまと仲良くなって、色々出来るようになって、今では立派にミサンガしている。ミサンガしてるって何だ。そんでこの声もどうせ天界に届いてるらしいから、僕のプライベートなんてない。ラジオDJかって伏線の神さま(ふくちゃん)は言ってったけど、リスナーからのお便り募集したいくらいだ。ん?ミサンガにそんなことできないって?そうだけど。


今いる世界は少女漫画。僕が重要な伏線なんだそうで。テツの時よりは活躍できそうだ。

そんなこんなで、今日も僕は楽しみながら主人公達の役に立っている。


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