クロス・ノクターン ~Me against THE WORLD~ /CASE1.ラスベガス The white JACK-POT
卯月響介
ラスベガス― 夢の裏に白い影…巨大“幸運”量産工場を破壊せよ!
プロローグ
0 序章― 怪奇事件はかく起こりき
世界中で起きる怪奇や幻想といった、人間の思想的、心理学的、あるいは文化的差異を由来とする事象は、全て一つの根源から派生したものである。
時代も人種も地域も、宗教ですら、根源の前では議論に値する価値を見出せないどころか、無意味な代物に等しい。
故に― というより当然だろうが― これらの本質たる「根源の渦」を理解し、自らの中に理解を取り入れたものは、私の調べた限り― 妖怪をも含めて― 特異点を除けば、その存在は認められなかった。
その意味で、この根源の渦は、人類の歴史と因果律を内包し回り続ける、アカシックレコードと相違ないと断言しても過言ではない。
仮に、神羅万象、あらゆる怪奇事件の本質を見抜き、坩堝に詰まった根源にたどり着ける者が現れたとするなら、到達者は、これ即ち、アカシックレコードの発見者であり、まだ誰も成し得ていない、人類の覇者と相違ない場所に立っているであろう。
――1981年 4月20日
バチカン大学神秘学科特別教授
シグマ・プールド・ハット
■
――時は流れて
現代。201X年。
ユーラシア大陸最東端、ポルトガル・リスボン近郊
「こちら20号車。シントラ付近で手配中の連続ひき逃げ車両を発見。
現在追跡中!」
――20号車了解。
「こちら12号車。反対車線より20号車を確認!
確かに、例のワーゲンだ。こちらも応援に回る」
「12号車、助かる」
――本部より各車。シントラ付近を警ら中のパトカーは、直ちに20号車の応援へ向かってください。
連続通り魔殺人の被疑者が運転している可能性があります。
「こちら7号車。現在、ロカ岬付近をパトロール中。現場に向かう!」
「こ、こちら20号車……き、消えた」
――20号車。何が起きたのか、正確に伝えてください。
「く、車が消えちまったんだ。霧のように、突然スッと」
――そんなバカな。
「12号車。こちらも確認している。間違いない」
「23号車も確認。これは、悪い夢なのか?」
――本部より各車。手配車両をN9号線付近で見失ったとの報告……
「こちら、7号車。N247号線、モンセラーテ宮殿付近を走行する手配車両を発見。追跡中」
「20号車より7号車。それは手配車両で間違いないのか?」
「ナンバーも同じ、バスタイプのワーゲン。間違いない!
現在、ロカ岬方向へ逃走中。こちらからの呼びかけに応答しない!」
「バカな! 10キロも離れた場所に、数十秒で移動したって言うのか?」
――7号車。現在位置を知らせてください。
「了解。今……な、なんだ……う、うわあああああああ!」
――7号車、どうしました?
「たすけてくれえええあああああああああああ! ――…――……―」
――…7号車応答してください。7号車聞こえますか? ……7号車! 7号車!
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