ラスト・ソード・ジャッジメント

漆黒のアキト

第1話:始まりの出会い

section.0

「なあ、ミーク。この屋敷の外はな、とんでもない世界が広がってるんだぜ! 今はこんな屋敷で勉強してもらっているが、18になれば、そん時はもうお前の自由だ。一緒に世界を見に行こうぜ! 」

 

 この言葉だけが、俺の全てだった。何のために生きるのかすら分からない日々の中で、唯一信じることができた人の言葉。

 

 だけど、結局それすら嘘だった。


「ミーク、あいつのことは残念だった……。でも、あいつは国のために戦ったんだ! 光栄だろ? ……というわけで、今日からは俺がお前の教育係になるから、よろしくな」

 

 どうして? どうしてあの人は自分の前からいなくなってしまったのか……。あの人無しでこんな場所にずっといないといけないなんて、耐えきれない。


「ミーク、––––さんになんてことをしたの……。あなたなんか私の子じゃないわ! もう顔を見せないで」


 時の感情に突き動かされ、目の前の命を奪っても、自分の中に宿る懐疑の念が晴れることはなかった。ただ、大切なものをまた1つ失っただけ。

 俺の行動は何の意味もなさない。


「どうしてお前はそんな腐った根性を持つようになったんだ。 このクソ息子が!その根性を一から鍛え直してやる」


 ついには、勝手に俺という生命体を創り出したはずの両親にすら、嫌われてしまうようになった。


 ……分からない。何のために生きるのか。何のために生きていけばいいのか。


 だから決めた、ここを出ることを。外の世界を見に行くことを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る