創作研究思考 面白さを考えるコラム
玄海之幸
第一回 小説とはエンターテイメントである
「オレの作品は面白い。だから見てくれ。読んでくれ」
これは小説だけでなく全ての創作活動を行う方々が絶対に考えている事だと思います。
ですが評価される方とされない方がいます。
今回は私の考えでのその辺りの違いをつらつらと語ってみたいと思います。
まず小説とは何か?
と私は問います。
自己表現の方法?
自己満足?
自己顕示欲の発現?
全て書く理由としては十分ですが、それは「読み手」からするとどうでもいい事です。
小説というものを読者目線で考えた場合小説とは
「エンターテイメント」
つまり娯楽に他なりません。
「当たり前じゃん」と思われる方は多いと思われますが、幾多の方の小説を読んだり相談に乗ったりした経験から言わせて頂くと、このエンターテイメントというのを意識して書かれている方は案外少ないと考えています。
具体的に例をあげますと、例えばガンアクションが売りの小説を書かれたとします。
大体の場合は、作者さんはガンアクションが好きな場合が多く、また銃器に精通しておられる方が大多数です。
そしてやっちまうのです。
何をって?
銃火器そのものの無駄に精密な描写を。です。
銃火器が好き故に自分の好みを存分に発揮しマニアックな銃火器を登場させ、それの描写にみっちりと手間をかける。
気持ちは凄まじくよく解ります。私も銃火器どころか兵器そのものは好きな人間です。
これは書いてる方は滅茶苦茶楽しいのです。
しかし考えてみてください。
無駄に緻密に書かれた銃の外観描写。それで全く知識の無い人間が正確にその銃の外観をイメージ出来るか否かを。
答えはほぼ間違いなく「ノー」です。
銃火器に詳しくない人間にはどんなに緻密に描写しても銃の正確な外観はイメージできません。
そしてこういう作品を書く方の大多数はガンアクション映画が好きな割合が高く、その映画を小説で表現しようとしている事が多いと思われます。
コレが間違いの元なのです。
映画とは映像作品であり、その中でマニアックな銃器を出した場合、マニアは「ウホ、いい銃だ」と思うのですが、解らない方はそこに気づかずに映画を見ても映画の面白さ自体には何の影響も及ぼしません。
映画において銃というのはあくまで小道具の1つに過ぎず、そこに洒落た物を用意しても映画のテンポや物語の面白さとは何ら関係がありません。
つまり銃の情報は見る側の好みと都合でスルーできるわけですね。
しかし小説となるとそうはいきません。
珍しい銃を出せばそれの解説をせねばならず、そして興味の無い読者にとっては解らない説明をされているだけのシーンになってしまうのです。
そして余計な説明を入れる事によってテンポが悪くなり、また読者から見切られる事にもなりかねません。
要は作者が「面白い」と思っていることが全く読者には伝わらない。
これは作者が自作をエンターテイメントとして読者に届けようと考えていないから起こる事だと思っています。
「一部のコアな読者だけを狙っているんだ」
こう言う方もおられますが、それを踏まえて考えて欲しい点があります。
ここで言うコアな読者。つまり前述の詳細な銃火器の外観説明が解る人というのは、そもそも銃の外観を知っている人間です。
その場合も知っている銃の外観をクドクドと語っているという事になりますので、結局のところ外観描写自体が意味を喪失してしまうわけです。
銃火器を描写する場合、大事なのは外観やスペックを語ることではありません。
その小説の中でキャラクターがどのように銃を扱うのか?
銃そのものの描写ではなく、銃を扱うキャラクターが大事なのです。
キャラクターを動かし、その中で銃の撃ち方や細かい所作などの描写に心血を注いだほうが読者視点では格段に面白くなると思います。
この場合、細かい所作と書きましたが、専門用語を酷使して銃を動作する描写を書くと結局は作者の自己満足になってしまうので、キャラクターが銃を使ってピンチを脱出する、もしくは機転を利かせるシーンなどを考えて描写してください。
如何にして読者を楽しませるか?
それを思考する事こそエンターテイメントを発信している創作者が常に考え、そして極めなければならない事だと思うのです。
一例として銃火器を出しましたが、何か専門的な題材を使用する場合には意識すべき事であると思っています。
こんな調子で今後もコラムを書いていこうと思います。
それでは今回はこの辺りで失礼します。
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