2

家につくと、

お母さんがいつものように忙しそうに弟の世話をしていたよ。


「あのね…」


小さな声で話しかけたけど、お母さんは気づかなかった。



「あ!お帰り。手を洗ってうがいしなさい!」


いつもの口調で僕を急かす。


僕は忙しい時のお母さんを、イライラさせてしまう天才だから。


怒られないように、急いで手を洗ってうがいをしたよ。


「あぁ!もう!なんでこんなにビチョビチョにするのあなたは!

ほらほら!早く着替えなさい!」


気をつけていたのに、洋服を濡らしてしまった。



忙しそうにお母さんは着替えの服を出してくれて、

弟と僕のおやつを準備してくれた。



「おやつを食べたら遊びに行くんでしょ?」


お母さんに訊かれても答えなかった。


「聞こえてる?返事は?」



お母さんがちょっと怒ったような大きな声で言った。


僕は

「今日は遊びに行かないよ」

一言だけ言って、テレビをみている振りをしたんだ。



だって先生から電話がくるかもしれない。


以前

僕が友達と喧嘩したとき、

先生から電話があって

お母さんが


「申し訳ありません。ご迷惑をおかけいたしました。」


と何度も何度も謝っていた。


今日友達と喧嘩しちゃったよ。


先生にまた怒られたよ。


僕は友達がズルをしたから、

注意したら怒って叩いてきて、

だから喧嘩になっちゃったんだよ。


お母さんに話そうとしたその時に…

先生から電話がかかってきちゃったんだ。


電話が終わって、

お母さんが怒鳴る口調で言ったよ。


「なんでそんな事したの?

もぅ!恥ずかしいじゃない!先生から電話がくるなんて!」


僕は何も言えなくなってしまった。


お母さんは

「理由を答えなさい!」

と怒鳴ったけど

何も言えなくなってしまったんだよ。


そして思ったんだ。


僕はお母さんを悲しませるだけの子供だ。


僕がこの家族に生まれてこなければ、

この家はもっと幸せだったんじゃないかな…ってね。


だけど

僕はお母さんが大好き。


お父さんも弟も大好き。


大好きなのに…。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る