第十話 詠唱魔法

 ここはグリア町の中心にあるレストラン〈ラフィスト・グリア〉だ。俺たちはそこに来た。


「ここには、時々来てるのよね~」

「ふーん、結構いい雰囲気」

「でしょ~」

「ご注文をお伺いします」

「すすいなを二つ」

「かしこまりました」


「ふぅ~、店内のほうが涼しいわね~」

「そういえばこの世界来てから夏なのに暑いと感じてないな?なんでだ?」

「あぁ~、それはわざわざ私がアルトに氷魔法を調整して冷たい魔力を纏わせてるのよ。今は店内だからなくしてるけど」

「そうだったのか、ありがとな」

「ふふん、どういたしまして」


「あとさっきも言ってた詠唱魔法ってなんなんだ?」

「えっとね、今アルトや子供たちが習ってるのは魔法の基本、ちょっとさえ魔力があれば簡単に出せる魔法。それに対して詠唱魔法は基礎の魔法より威力と魔力消費が高いの。詠唱することで魔法の最大の力が出せるのよ」

「ふーん」

「詠唱する部分は自分で考えないといけないんだけど、ちゃんとした意味がある言葉じゃないと魔法は出ないの。でも人のをパクって詠唱することも可能だけど、自分で作った詠唱魔法を他の人に使われたくないって人は、正式な契約書を書くことで他の人が使えないようにすることもできるわ」

「なるほど」

「ちなみに詠唱魔法は中学校で習うわ。あと剣術もね」

「俺も詠唱魔法考えてるんだけどそれにはまず得意属性の魔法と剣術をちゃんと使えるようにならないとな」

「ふふっ、完成するのを楽しみにしてるわ」

「お待たせしました、すすいなお二つですね」

「ありがとうございまーす」


 すすいなとはざるそばのことだった。

 そしてすすいなを食べ終わった。


「っはぁ~、おいしかった」

「よかった、またいきましょうね」

「あと、ずっと聞きたかったんだけどお金って」

「大丈夫よ、言ったでしょ?親が騎士団って。お金なんて30歳くらいまで無職でも余裕で生きれるくらいたくさんあるわよ」

「騎士団ってそんなにお金貰えるの?」

「貢献度によって変わるわね」

「てことはルイナの親はすごい騎士だったんだな。俺も早く騎士団とかに入りたいな」

「欲しいものがあったら買ってあげるけど?」

「いや自分で稼ぎたいしな」

「欲がないわね」

「それが欲だ」

「それもそうだけど」

「さぁ公園に戻って子供たちと魔法の練習だ」

「そうね」


「あと、上見たら飛んでる人何人かいるけど俺ら飛べないの?」

「中学生になったら誰でも飛べるわよ」

「ならなんで最初から飛ばないんだ?」

「アルトが町を覚えるには歩いたほうがいいかなって」

「空から町を見るのも大切だよ」

「それもそうね、飛び方知らないわよね?」

「うん」

「詠唱魔法なんだけど覚えてね。この空を流れる風よ、この身を羽ばたかせろ!」


 そういうとルイナの体が浮いた。


「おお!」

「ほらやってみて」

「ああ。この空を流れる風よ、この身を羽ばたかせろ!」


 すると足が地を離れた。


「うぉ!」

「方向は自分が行きたい方向に体を傾ければ変えられるから、さぁついてきて」


 ルイナは上に上がりながら空を飛んでいく。

 俺もあとに続かなきゃな。


「ほっ」

「ちゃんとついてきてるわね」


 町が見渡せる。風が気持ちいい。まるで鳥になったようだ。


「すげー」

「楽しいでしょ?」

「ああ、とってもな!」

「あと飛んでる最中は魔力が少しずつ減っていくわ」

「あ、それも聞きたかったんだけど、魔力ってなんなんだ?」

「魔力っていうのはスタミナと似たようなもので、使って少なくなると、疲れるっていうか息切れがしたりするわ。つまりは魔法を使うと魔力がなくなって、剣術とかだとスタミナがって感じよ」

「なるほど」

「で、スタミナつけるには体を鍛えればいいけど、魔力つけるには魔法を使うほど自分の最大魔力量が多くなるわ」

「ってことはちゃんとした魔法剣士になるには」

「スタミナも魔力もつけないとね!」

「ぐっ、こんなことでへこたれねぇぜ!」

「その気持ちを大事にね。ほらあそこが公園よ」

「もう着いたのか」

「降りるときは体を目的地に向けて降りる、そして手前で勢いをとめる。怖かったらもっと手前でもいいけど」

「わかった」


 俺はルイナに合わせて降りた。


「ほいっと」

「地面に降りると変な感じだな」

「あ、アルトお兄ちゃんとルイナお姉ちゃんだ」


 子供たちが俺たちに気づいてよってきた。


「さぁ、続きをしましょう」

『はーい』

「じゃあまたそこに並んで」

「今度は土魔法か?」

「そうよ、じゃあ手を前に出して」


 みんな手を前に出す。


「そうしたら5メートル先くらいの地面に向けて下げて」

「ん?なんで下げるんだ?」

「いい質問ね、土魔法の基本は土を操ることなのよ。今回するのは土の壁を作ること、だから壁を作る場所に向かって手を向けるのよ。コンクリとかを操るには得意属性が土の人か、詠唱魔法じゃないとできないわ。あと土を生成するにも詠唱魔法じゃないとできないのよ」

「そうなのか」

「ここテストに出るから覚えておいてね!」

『はーい』

「本当に先生になりきってるな」

「話を戻すわよ。手を向けたら足の裏に力を入れて~、その力を今立ってる地面から手を向けてるところの地面に流れていくようなイメージをするの。最後に手に力を入れて、はっ!」


 ルイナの先に土の壁ができた。その周りの土が少しへこんでいる。


「さぁみんなもやってみよー」


 そういうとルイナが作った土の壁がなくなった。言われたとうりやってみると


「できた!」

「アルトは黙ってて」


 ルイナは俺を睨めつけてくる。


「私もできた!」

「わぁーすごいわね」

「うん!私の得意属性土なんだ」

「それでも一回目でできるってすごいわよ!」


 俺は得意属性じゃなくても一回目でできたのに褒めてくれねーのかよ。


「出来なかったみんなも何度でもチャレンジしよー!」

『うん!』


 ルイナは俺を見て『今度はちゃんとじっとしてろ』という顔をした。当然従うわけもなくルイナの立ってる地面に向かって手を向けて土魔法を撃った。

 するとルイナは足元に氷魔法を撃って地面を凍らせた。


「なっ!」


 そしてルイナは俺の立ってる地面に手を向けた。


「まずい」


 逃げようとしたが遅かった。俺の周りの四方向に土の壁ができた。

 壊そうと思ったが壊せてもまた撃たれるだけだ。出してくれるまで静かに休んでいた。


 しばらくすると土が壁がなくなった。見ると子供たちはみんな土魔法を成功させてよろこんでいた。ルイナも一緒に。


「おぉ~みんなできたのかすごいな」

「うん、ルイナお姉ちゃんのおかげでみんなに自慢できるよ」

「そうかそうか、よかったな」

「それよりまた二人とも喧嘩してたでしょ」

「アルトがいちいち喧嘩売ってくるのよ」

「本当にラブラブなんだね」

「ラッ!」

「あ、そういえば俺たちが付き合ってるのは嘘なんだよ」

「そうなの?」

「そうよ、そもそもアルトと付き合いたい人なんかいないわよ!」

「おい、2回告られたことあるんだぞ」

「本当かしら?で、そのお二人さんとは付き合ったの?」

「1回目の人は付き合ったけど、2回目の人は断った」

「どれくらい付き合ったの?」

「ぐいぐいくるな。えっと1年半くらいかな。中学2年のとき付き合って、3年でクラス分かれて、自然消滅しちゃった感じだな」

「ふーん」


 なぜこんな悲しい話をこいつに話さないといけないんだよ。まぁ今はこう言っておくか。


「なんで二人は仲良いのに付き合わないの?」

「仲良くないからよ」

「らいしな」

「そうなんだ」

「次はなにする?」

「そうね、炎魔法さすがに危険だから5年生までお預けね」

『え~』

「自由時間でいいかな。私は少し疲れたからベンチで休んでるわ」

『はーい』


 ルイナはベンチに座った。


「スタミナないな」


 俺もルイナの隣に座った。


「うるさいわね、子供に教えるなんて初めてだったから。そもそも魔導士はスタミナより魔力のほうが多いのよ」

「そのわりには楽しそうだったけど」

「ちょっとテンションが高かったのよ」

「そんな感じだったな。あと4属性以外に何属性があるんだ?」

「えっと、光と闇、氷と雷と草だけど、その得意属性の人しか使えない属性があって、私が知ってるのは毒、麻痺、音、竜、霊、星ね」

「なんとなくだがわかった」

「アルト兄ちゃん俺たちと鬼ごっこしよー」

「アルトお兄ちゃん私たちと砂場で遊ぼ~」


 子供たちが俺の前に来る。


「女子はあと!」

「男子のほうがあと!」

「え、えっと」

「すごいモテモテだね~アルトお兄ちゃん~」

「ルイナはお兄ちゃんって言うな!静かに休んでろよ。なら最初は鬼ごっこして後で砂場で遊ぶよ」

「約束だよ」

「うん」

「じゃあアルト兄ちゃんが最初鬼な」

「覚悟しろ~」

「わぁ~」

「手加減しなさいよ~」

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