第八話 ルイナ
「頭痛て」
目が覚めると少しだけズキズキする頭痛が来た。
「そういえば昨日」
昨日の出来事を回らない頭を回して思い出した。
ベットから立ち上がって昨日買った黒いコートを着た。サイズもピッタリだ。
リビングに出るとキッチンから声がした。
「あ、おはよ。アルト、そのコート似合ってるじゃない」
「おはよ~、頭痛いから大きい声出さないで」
「二日酔い?まったくアルトはお酒に弱いな~」
お前に言われたくねーよ。
「ルイナは二日酔しないのか?」
「したことないわよ」
こいつは酔うだけ酔ってあとは何もないって。
「さぁ、朝ご飯出来たわよ~」
「なんなの~」
「お米とせむみそと目玉焼きよ」
せむみそって?と聞こうと思ったが匂いでわかった。味噌汁だ。あと目玉焼きは目玉焼きなんだな。
「机に運んで」
「へーい」
「よし、椅子に座って、いただきまーす」
「いただきまーす」
「我ながら上出来ね!」
「美味しいな。けど二日酔いがなんか腹立つ」
「なら私が回復魔法で少しだけ緩めてあげようか?」
「出来るなら早くそうしてくれ」
ルイナは俺のおでこに人差し指を当てた。
「おっ、だんだん痛みが引いてく」
「完全に治るわけじゃないけど」
「少しだけ痛かったからもう痛みがなくったよ」
するとルイナは手を引くと同時にデコピンをした。
「いてっ」
「ふふっ、かっわいっ」
昨日のこと覚えてるのか?そう思いながら朝ご飯を食べ終えた。
「じゃあ、片付け頑張ってぇ~」
「はいはい」
「私は洗濯物を洗って干しとくわ」
「そこは俺がしなくていいのな」
「私の下着見られたくないし。どうしても見たいってなら別だけど?」
「食器洗ってまーす」
そうして食器を洗った俺は風魔法で乾かしてみた。
「慎重に~」
ある程度乾かすと手に持って乾いてるか確かめた。
「おっ、ちゃんと乾いてるー」
そして手で食器棚に戻した。それを続けて後片付けが終わった。
「終わったわね~、お疲れ」
洗濯をとっくに終わらせたルイナが来た。
「ちゃんと風魔法で乾かしたよ」
「お~、えらいえらい。よくできました」
「子供扱いするな」
「さてと、なにしようなか~」
「そういえば、お前って高校生だろ?」
「ええ、そうだけど?」
「学校は?」
「今は夏休みよ。一昨日からね」
「そうか」
俺もこの世界に来なければ夏休みの間、引きこもりゲーム生活楽しんでいただろうな。まぁゲームに飽きてるし楽しんでいたかはわからないが。
「でもアルトも高校生くらいよね?」
「高2だけど」
「私と同学年じゃない。アルト、学校はどうするの?」
「出来ればこの世界の高校に入りたいけど魔法も剣術も知らない人を入れてくれるところって」
「なら私が教えてあげる」
「いいのか?」
「もちろんよ。アルトのその才能を信じればこの夏休み中に小学生レベルにはなれるわね」
「任せろ!」
「いい意気込みね」
「てか、この世界はなんで魔法と剣術を習うんだ?」
「あれ?知らないの?魔王を倒すためよ!」
「やっぱりそういうのなんだな」
「私は絶対に魔王を倒さないといけないの!」
「なんで絶対なんだ?」
「私が中学の時、エスタル国第一騎士団のお父さんとお母さんは魔王の幹部に殺されちゃって、敵討ちに」
「な、なんか悪いこと聞いちゃったな」
「なーんてね」
「嘘なのか?」
「お父さんとお母さんが殺されたのは事実だけど、私好きじゃなかったし」
「なんで?」
「昔から忙しい忙しいって言って遊んでくれなかったし、私ひとりっ子だから一人暮らしに必要な知識全部小学生で覚えさせられたし、何でもかんでも満点じゃないと怒られる毎日だったから親がいなくなって逆に良かったわ、ホントに」
「産んでもらった親になんてことを。ならなんで魔王を倒すんだ?」
「魔王を倒すなんてカッコよくない?敵をバンバン倒して最強の称号を得る。カッコいいと思わない⁉」
ルイナはきらきらとした目で俺を見てくる。
「まぁ確かにカッコいいけど」
「でしょ!いやーアルトわかってるわね~」
「だからそんなに優等生になるくらい努力してるのか?」
「もちろんよ!」
「なら俺は魔王討伐も手伝おうかな?」
「今からやって私レベルまで追いつくかしら」
「まぁ無理だったら諦めるさ。魔法と剣術教えてくれるんでしょ?ルイナ先生?」
「せん、せい……ふふっ、このルイナ先生がすべて教えてあげるわ。ちゃんとついてきなさいよ!」
「はーい、ルイナ先生」
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