第一話 異世界への一歩

 気づくと俺は真っ暗の場所にいた。いや真っ暗な場所を落ちていた。


「ん⁉なんだここ」


 混乱する俺は気を失う前のことを思いだす。


「確か異世界の行き方を調べていたら……そう、パソコンに吸い込まれた」


 なんでこうなったかはなんとなく理解できたが、今なぜなにも見えないところを落ちているのかがわからない。少しひんやりした空気を切り裂きながら体は落ちていく。


「俺、どうすればいいんだろ」


 そう思った瞬間光が見えた。落ちているからなのだろうかその光は大きくなって近づいている。


「これは、地球?」


 その光は地球とは少し違がって地球よりも大きいであろう一つの惑星だった。


「綺麗だな」


 そう思ったがこのままでは大気圏で燃え尽きてしまうだろう。しかしどうすることもできない。


「死ぬのかな」


 俺は体を丸めて力を入れた。


 そのとき、真っ黒い煙のようなものが俺を包んだ。


「死んだ、のか?」


 でも感覚はちゃんとある。なにが起こったかよくわからない時間がしばらく続いた。


 突然真っ黒い煙はなくなった。さっきより惑星は近くにある。


「もしかして大気圏を抜けたのか?」


 だとしてもこのまま落下して死んでしまう。目の前には町らしきものが見える。また俺は体を丸めて力を入れた。だがさっきのような黒い煙は出ない。


「もう、ダメ、か」


俺はそのまま町に落ちていった。





「ん、あれ?ここは」


 俺は寝心地の良いベットの上で目を覚ました。


「あっ、やっと目を覚ましたわね」


 ベットの横で、蒼い目をしたロングの水色の髪が髪先にかけて白いグラデーションがかかっていて、白いドレスのような服の綺麗な少女が椅子に座っていた。俺と変わらない歳だろうか。


「えっと」


 何を言えばいいのかわからなくなり息詰った。


「あんたはなぜかわからないけど空から降ってきて、着地する手段を持ってなかったみたいだから私が水魔法を使ってあんたを助けたのよ」


「あ、ありがとう」


 水魔法?よくわからないが命は助かった。ベットから体を起こそうとすると


「あ!もう少し寝ていてもいいわよ?」


「いや、知らない人の家でずっと寝かされているのも失礼なんで」


「別に失礼なんて」


「まぁ、とりあえず起きるよ」


 俺はベットから起き上がった。


 部屋を見たところ木組みだが普通の家だ。


「ちょっと聞いてもいいかな?」


「ん、なにー?」


「ここってどこなの?」


「んとねー、ここはエスタル国のグリア町よ」


 エスタル国?そんな国は聞いたことがない。というよりこの彼女の髪の毛と目の色からして日本じゃない。さらには空から落ちてるときに見た惑星がここならここは地球じゃない?


 まさか俺がパソコンで『異世界に行く』っていうのを押したから本当に来てしまったのか?そんなはずがあるわけがない。けどそう考えるしか……。


「あのさ、変なこと言うようだけどこの世界って魔法使えるの?」


「なに寝ぼけてるのよ。当たり前でしょ。小学校で魔法習わなかったの?」


「い、いや、どうだろうね」


 やっぱりこの世界は魔法が使えるんだな。


「冗談はさておき、私からも質問していい?」


「できる限りのことは答えるけど」


「なんで空から降ってきたの?あとどこから来たの?」


 俺はこの世界に来るまでの話をしようか迷ったが隠しててもいいことはないので話した。



「で、私に助けられたわけ?」


「そうそう」


「ふーん」


「やっぱり信じてくれないか」


『本当のことを話せ』などと言われるかと思ったが


「いや、信じるわよ」


「えっ」


「この世界にはまだ解明されてないことが多いし、実際に異世界に行く魔法を研究してる人が本当に異世界に行ったという事件があったりするから、他の世界の人がこの世界来るっていうのもありえない話じゃないし、それに」


 彼女は俺の顔をじっと見た。


「なに?」


「あんたが嘘ついてるように見えないから」


 彼女は優しく笑った。その可愛い笑顔に俺はうつむいてしまった。


「あれ~?照れてるの~?」


 彼女は俺の顔を覗いて俺をからかった。


「て、照れてねぇよ!」


「必死ねー」


「うるさい!」


「うるさいってなによ、私はあんたの命を助けた命の恩人なのよ?」


「わかったから」


 この短時間で色々なことがあったのに彼女の気さくな性格のおかげか話してると落ち着いてくる。


「そういえば、お前なんて言う名前なの?」


「ん?私?」


「うん」


「私の名前はルイナ・エイス・セレーネよ。ルイナでいいわ」


「ルイナ、か」


「命の恩人なんだからよーく覚えておくのよ。というより人に名前を聞くときは自分から名乗りなさいよね」


「はいはい、えっと俺は」


 実名を言おうと思ったが、せっかく来た異世界だ。俺のゲーム名でもあった名前を使おう。


「俺の名前はアルト・アギル・リーヴェだ」


「アルトね。よろしく」


「ああ」


 俺とルイナとぎゅっと手をにぎった。

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