‐日に向かって②‐

それは凄い光景だった…男の人は、光り輝く剣で固いはずのサンドワームの皮膚を斬り、本来なら少しづつではあるが再生が始まるはずが、その傾向はない斬られた傷からは煙が上がっている、そしてお姉さんはどこからか一枚の服を取り出し私に渡してくれる、お姉さんと同じ服の色違いだ…暖かい…


「おーし! 片付いたぞ~ 」


男の人がこちらに手を振りながら歩いてくるが


「何を油断しているの! 来るわよ! 」


お姉さんが叫ぶ、私の耳にも届く…砂を、大地を掻き分け地中から近づいてくる複数の音を…それは音だけではなく振動して伝わってくる、揺れは大きくなっていきそして横から私を掴む綺麗な腕


「飛ぶわよ! 」

「うわ~これは嫌だな…」


今までいた場所は大量のサンドワームの群れで覆いつくされていた…十数匹のサンドワーム、とても二人だけでは倒せない…


「私を置いて逃げてください…お二人なら逃げれるはず…」


「いやいや悲観しないでも大丈夫よ? 余裕だから」

「ケモ耳ちゃんだ~後で触らしてくれない?」


私の頭を撫でながら告げるお姉さんとなんいかとても残念な顔で私の耳を見てくる…ケモ耳、獣耳?

そして会話をしていても一向に地上へ下りない…冷静になって気が付く、これは普通の人ではありえない高さまで飛んでいた…


「さっきのはアキトが倒したから次は私が…ってあれ…共食いしてない? アキトが倒した敵に群れてるわよ…狙いやすいけど」


「うえ~気持ち悪!! イズミちょっとあれは気持ち割るすぎるから一発どでかいのでさっさと倒してくれない? 」


「前言撤回してアキトに譲ってもいいわよ? 」


二人とも蒼い顔をしていた、やはりあの量は無理なのか…そうしていると黄色にいや黄金に近い色に包まれるお姉さんから溢れ出ている魔力? とても綺麗だ…


「ちょっと痺れるかもしれないけど我慢してね~たぶん大丈夫だけど…」


「はい」


魔力の光に触れているとピリピリとする、私を抱えてる手とは違うもう片方の右手をサンドワームの方へ向けると…雷がそこから複数落ちた


「サンダーランス! 一撃だと残りそうだから連射!! 」


揺れる大地と砂塵、爆ぜるサンドワーム…私は一体何を見ているのだろうか…本来複数でいどむサンドワームをたった一人で倒した男の人もそうだが、このお姉さんは一人で地上で蠢いていたサンドワームの群れを殲滅した…転移者、転生者であっても異常に見える…


「よし…もういないみたいだね…アキトも称号に見渡す者がでたわよね? 」


「ん? ああ手に入れた? それがどうした? 」


「まだ、ステータスの秘匿部分しか見れない? クエスに聞いていろいろ試していたらさ第三者視点というか本当に全て見通せる見たいよ…クエスは王城からこの世界すべて視ようと思えばみれるらしいし…」


「まじか! 便利そうだけどそれ…頭悪い俺にはきつそうだけど…」


「私もまだまだ視える範囲が狭いけど…使ってると頭痛がするわね…多重思考とかのスキルがほしいわね」


何か難しい話をしている二人…地上に降りて見渡すと弾けたサンドワームの部位がそこら中に落ちている…

コアが落ちているがかなり傷が入っている…そう簡単には傷がはいらないはずなのに…


「そういえば貴方はどうしてこんなところに一人で? 」


「国、村、町から逃げてきた…あのまま居ても飢えて死ぬだけ…」


「ん~リーナから聞いた通り、こちらの大陸は本当にひどいようだね…」


「お! 俺にも視えた…うっ…イズミとかよくこれ使えるな…数秒観ただけで気分が…」


その後は、まるで夢のようだった…私は本当は最初にサンドワームに食べられ、死んだのではないか? と思うほどにそれは凄い光景だった、焼けたお肉、新鮮な野菜、美味しい飲み物…私は夢中に食べた、お腹いっぱいに食べれる、何年ぶり? もしかして初めてかも知れない。


「ほら、どんどん食べなさい! 」


「俺たちも成長したな~西の大陸では災難だったものな…そうだよな空間収納があるんだから現地調達などしないで買えるときに買い込んでおけばよかったんだよな…」


「やめてよ! 噂をすると封印から出てきそうでしょ!! 」


「フラグは駄目だよな… 」


「ああ…そういえば自己紹介がまだだったわよね、私はイズミ! そしてこっちのがアキト」


「助けてくれてありがとうございました…食べ物もくれて…」


「いえいえ、貴方の名前は? 」


「名前は無いです…」


「「……」」


黙り込んでしまう二人、私の事をいろいろ質問され住んでいた国、貧民街、私が物心ついた時からの話を二人にした、二人は頷きながら親身になって話を聞いてくれた。


「私達はね…中央大陸、向うの方にある港町からここまで来たの」


指刺す方角は私が兵に言われて向かっている最中にの方角だった…この向こうにはこの大陸にある国以外が協力して発展した美しい港町、フランクスという場所がありそこから二人は王城から頼まれて調査に来たらしい。



「どうやら、ヘイダムも国の物達に港町の事を伝えていないみたいだね…」


「民を、兵達を逃がさず、物資を自分達だけで使っていたんだろう…ここも屑の集まりか、大陸を渡る船を出す町…噂話、夢物語として伝わる今か…」


「あとは帝国だけだね…どこも条約も守らず戦争を続けているなんて…」


怒りの表情を浮かべる二人…お姉さんがだした国の名前…


「あの…ヘイダムは先日…戦争に敗れたそうです…」


「「え…」」


食事を続けながら今後の方針を決めている二人を眺めつつ、私は教えてもらった港町に行こうと思った…何日歩けばいいかわ分からない、でも希望はできた。


「そうだ! お風呂に入りましょ? アキトは向こういってて! 覗こうとしたら…」


「はいはい…見回りしてきますよ~」


「見渡す者も使うんじゃないわよ! 」


「…舐めるなよ! スキルや称号を使うなんて邪道だ! 男ならその肉体! 限られた道具のみで覗きをするものだ! 覗き道とはそもそも…」


「うるさい! はやく行け! 」


お姉さんは男の人を追い払い、魔法陣を展開する、そこには無かった石作りの湯船があっという間に出来上がり、水魔法で水をため始める。

私は服を脱がされ抵抗できぬまま現れる、髪を泡立てられゴシゴシと…媚びれついていた汚れが落ちていく…


「綺麗な髪ね…肌も綺麗だし…眼綺麗だね~」


「…ありがとうございます」


「尻尾もね~」


綺麗だと褒められ、恥ずかしくなり私はお湯の中に口まで沈む、男の人は除く事なく、周囲を警戒してくれているようだ…そもそもこんな砂漠の真ん中でお風呂に入る事自体がありえないのだけど…

お風呂からあがりお姉さんは私に服をくれた、ボロ布ではなく新しい服や靴をだ、私は着替えると二人も準備を終えていた、ここでお別れか…すると


「さて…じゃーいこうか! 」


私に向かい手を差し出すお姉さん…


「え? ついていっていいの? 」


「何かの縁だし一緒にいきましょ? 」


「ケモ耳娘が仲間に入りたそうにこちらを見ている」


男の人はお姉さんに蹴られて頭から砂に倒れた…


「そうだ、名前を決めないとね…」


私はお姉さんが言っている事に理解が追い付かなかった、命を助けてくれただけではなく、食事も与えてくれて、お風呂、洋服ををくれた…そして一緒に来ないかと…


「決めた! 貴方の名前は今日から日向! ヒナタとするわ」


「ヒナタ? 」


「そう、日陰ではなく明るい日に向かって元気に…」


「ヒナタ…ヒナタ、私の名前…」


「ん、可愛い笑顔、これからよろしくねヒナタ」


「はい、おねえ…イズミお姉ちゃん」


私、私達は三人で歩き始めた、町に訪れたが私に砂地を案内した兵は私に気づく事はなかった、今はボロ布ではなく綺麗な服装、髪も土やドロなどの汚れが全て落ち、とても綺麗だ…夕暮れになっており宿へととまる。


「アキトは一人ね! 」


「あ~~~俺もモフモフしたい!! 」


「ヒナタいきましょ? 」


「はい」


男の人アキトさんは肩を落とし悲しそうな顔で私を見てくる…部屋にはいる、協会で住んでいた時にベッドとかもあったが宿は綺麗だった…整えられたベッドが二つ、寝床に付き寝ようとするイズミお姉ちゃん。


「い、一緒に寝ていい? 」


「あれ、ヒナタ意外と寂しがり? いいわよ? おれで~」


毛布を片側ひろげて、ベッドをポンポンと叩く、私はそこ入り込みイズミお姉ちゃんに抱き着く


「いい臭い…お母さんの臭いってこんな感じなのかな? 」


「ん~~~~嬉しいような悲しいような…ヒナタちゃんも温かいね~」


温かいベッドと久しぶりの人の温もりを感じながら私は眠りについた。



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